ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「尾崎豊夫人(尾崎繁美さん)」について。
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「ネットサーフィン」なんて言葉が生まれて久しいですが、パソコンにしろスマホにしろ、いつの間にか「どうして私はここにいるのだろう?」というものを観たり読んだりしていることが多々あります。次のページや画像をクリックする瞬間、そこにどれくらい自分の「意思や意識」が働いているのか、正直分かりません。人間は基本「めんどうくさい」と「なんとなく」で出来ていて、このふたつの概念とどう対峙し、そして克服・共存するかが人生だと思っています。しかし、インターネットの普及によって、人は「めんどうくさい」と「なんとなく」だけで、案外充実した時間を過ごせてしまうことが証明されました。
私は、頑固な割に面倒臭がりのため、常にその両極を行ったり来たりしており、非常に疲れます。よって、「おすすめ画面」や「次のページ」に支配されるがまま、無自覚に過ぎて行く「ネット漂流」的な時間の使い方は、決して嫌いではありません。
先日も、起き抜けにスマホで時事ニュースを斜め読みしていたのですが、気がつくと何故か「尾崎豊夫人による30年後の手記(連載もの)」に没入していました。ベッドから出た後もスマホをトイレに持ち込んで、最終的にはパソコン画面で数時間かけて読破。途中、時系列や詳細を調べたのでしょう。パソコン画面には「尾崎関連」の検索ウィンドウが10個以上開かれていました。
いつ、どこで、私はそのページをタップしたのか。記憶はまったくありません。確かに、長年にわたり尾崎豊夫人(尾崎繁美さん)が気になってはいました。とは言え、日々の仕事や暮らしの中において「尾崎豊夫人」のことなど、ともすれば死ぬまで深掘りしないまま一生が終わったとしても何ら不思議ではないほど、私の中の優先順位は低いのも事実。そんな私の潜在意識が、クリックひとつでここまで覚醒したのは、紛れもなくネットの力です。