資本主義は世の中で最も強力に機能している社会システムだが、一面では、不完全で、残酷で、いい加減なものでもある。会社や喫茶店を経営する事業家、作家である著者が、本書では資本主義の問題点を浮き彫りにする。
 1980年代までは、町のあちこちに喫茶店があった。人々は本を読んだり、友人と議論を戦わせたりしながら、自由気ままな時間を過ごす。そこには今の世の中が失いつつある解放感が漂っていた。だがバブル期を境に、そうした喫茶店は画一化されたチェーン店に変えられてしまう。経済成長だけが唱えられるこの世で、「非効率のモデル」のような昔の喫茶店は生き延びにくくなってしまった。
 資本主義の世界で、消費者は個性を剥奪され、ただお金を運ぶ存在に転落してしまった。教育は画一化された人材を生み出そうとし、2020年東京オリンピックを巡って皆と異なる意見を言うと、直ちに「非国民」と野次が飛んでくる。そんな窮屈な世界から多様性を取り戻すため、著者は「資本主義が及ばない場所」=「路地裏」を提示する。より良い社会とは何かを考えさせる良書だ。

週刊朝日 2014年12月26日号

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼