
■第3章:アー・ユー・エクスペリエンスト?
父さん、俺はいま、イギリスにいる
人との出会いがあった
彼らは俺を、大スターにするつもりだ
俺は名前を変えた……ジミ(Jimi)と
俺が初めて、イギリスでギターを演奏したのは、クリームと共演したステージだった。俺は、エリック・クラプトンの演奏スタイルが好きだ。彼のソロはまったく、アルバート・キングのようだ。エリックは凄すぎる。それに、ジンジャー・ベイカー、彼は、まるでタコみたいだよな。実際、生まれながらのドラマーだ。彼が演奏する姿を見ると、腕と脚しか目に入らない。
チャス(・チャンドラー。マネージャー兼プロデューサー。元アニマルズのベーシスト)は、顔が広く、いろんな連中の電話番号を知っている。俺は、彼の力を借りて、ベーシストとドラマーを見つけ、ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスを結成した。俺にぴったりのサイドメン、同じ感性のミュージシャンを見つけるのは、かなり苦労した。
俺たちはさんざん演奏を試した後、ジャム・セッションをした。すると、ノエル・レディングが、ぶらりとやってきた。彼は、ニュー・アニマルズのオーディションに来ていたのだ。俺たちはたまたま、同じビルにいた。
ノエルは、強烈なロックが好きだ。彼は、ラヴィング・カインドというグループで、もっぱらリード・ギターを弾いていた。チャスは彼に、ベースに取り組んでくれと言った。俺は、彼のヘアー・スタイルが気に入った。それは、まさに正解だった。ノエルは、ベースを演奏する時、リードを思い浮かべている。ベースの名手はほとんど、そうだ。俺たちが彼を選んだのは、彼がベースで、何だって演奏できたからだ。
ミッチ・ミッチェルは、20人前後のドラマーの演奏を聴いて、一番いいと思った。彼は、ジョージィ・フェイム&ザ・ブルー・フレイムズというグループで演奏していたが、2日ほど前に、グループをやめたばかりだった。彼はどちらかと言えば、オーソドックスなドラマーだ。ファンキーなR&B・スタイルのドラマーと言える。ミッチは、ジャズ狂だ。彼はいつも、エルヴィン・ジョーンズというジャズ・ミュージシャンの話を持ち出す。彼が一度、エルヴィン・ジョーンズのレコードを、俺にかけて聴かせたが、俺はその時、こう言った。「くそっ、これはおまえだろ!」と。
俺は、できる限り少ない人数で強烈なインパクトをもつグループの編成について考えていた。いろんな選択肢があったが、結局トリオになった。そしてそれが、うまくいった。俺が、リズム・ギターの奏者を加えたら、すべてスロー・ダウンするだろうと思う。なぜなら、俺が求めるものを彼に示す必要があるからだ。何かをしたければ、自分自身でやるのが一番だ、そうだろ?
俺たちは実際、15分ほどオルガンを試したが、うまくいかなかった。何の変哲もないサウンドになった。このトリオのラインアップだと、すごくフレキシブルだ、俺たちは、かなりインプロヴァイズできる。それは、あまりにも多くのグループに欠けているものだ。俺が、ブルース・メンを2人入れていたら、俺たちは一つの方向、つまりブルースに邁進していただろう。だがそれは、俺じゃない。俺はブルースが好きだ。だが、一晩じゅう、演奏したくはない。うんざりさせるブルースもある。何も感じないものが。それに、俺たちはあの真夜中のグルーヴに参加しようとも思わない。約束事に縛られるのは、まっぴらだ。俺たちは自由にやっている。
俺たちは、どんなカテゴリーにも属したくない。俺の音楽はポップじゃない。それは、俺だ。俺のギターは、俺のノート、俺たちのノートだ。その元になっているものは別にして。俺たちは、独自のサウンドを、俺たち自身の音楽を、俺たち自身の個性を創り出そうとしている。俺たちは、このバンドというもの、バンドとしての歩みに、目を向けている。俺たちの基盤がしっかり固まるまで。
それは実際、イマジネーションと同じように基本的なことだ。根本だよな。
だから、俺たちは、エクスペリエンスと呼ばれるのが気に入っている。まさにその通りなんだ。[次回1/13(火)更新予定]