珍書とはへんな本のことだ。へんな本、というのは本当にへんなのだ。想像を絶する文章や主張や絵や写真が、本という体裁をとって世間に流通している。本書はそんな本を写真集、図鑑、デザイン書、造本、理工書、語学書、人文書、医学書、エロ本、警察本にわけて紹介してある。
 へんな本の中でも本当に面白い(=コワイ)のは、ウケを一切狙っていないものだ。本にするのだから「読者にウケたい」気持ちは当然としても、その心理の奥にはいろいろな表現がある。ここに並んでいる本は、どれも相当にへんであるけれど、並べてみるとへんの高低は明らかにある。編集者でもある著者のハマザキさんの厳しい目によってふるいにかけられているから、軽い気持ちで「ウケを狙ってへんなことやってる」ようなものは足元にも近寄れずにハネられている。そんな濃いセレクトの中でも「へん中のへん」が、はっきりと浮かび上がる。
 最初に紹介されるのが「珍写真集」である。写真集というとアートの世界とも重なってちょっとオシャレな装丁が多い。だから写真集ならそれが「ゲロの写真集」だったりしても(本書に紹介されている『DRIP BOMB』で、会田誠らが推薦しているらしい)、芸術なのでは……と判断を保留してしまいがちだ。でも、アートなゲロなど取るに足らないほど、もっとすごいへんな写真集はいっぱいある!
 ただし取り寄せて読むのはやめておいたほうがいいような気がする(たぶん読んだらつまらないと思う)。それでも私は、前年を代表する壮大な葬儀をオールカラーで紹介し一冊5万2000円もする『葬儀トレンド写真集2013』(葬儀社向けの資料集)と、高尿酸血症と奇岩・奇石と童話の三つのテーマが一冊になっている『写真と童話で訪れる 高尿酸血症と奇岩・奇石』(著者は岡山大学病院長)は入手したくてしょうがない。
 この本はやはりKKベストセラーズの「ベスト新書」で出て欲しかった。

週刊朝日 2014年10月24日号