FM802の番組『ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON !!-』で、DJ落合健太郎、番組スタッフ、そしてTSUTAYAが毎月1組、注目の新人アーティストをピックアップする企画が、【ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON!!- TSUTAYA New Discovery LIVE】として、2月5日、大阪・心斎橋JANUSにてスペシャルショーケースライブを開催した。
まずは、TSUTAYA ROCK KIDS 802店・店長こと落合健太郎と、実際に4年間TSUTAYAで働いた経験があるという、同じくFM802DJの高樹リサが登場。大橋ちっぽけ、ヤングオオハラ、Rude-αと、今後のブレイクが期待される3組が集った宴をトークでも盛り上げる。
そして、心地いいアコースティックギターの音色と、深く優しい歌声が寄り添うように始まったのが、大橋ちっぽけのライブだ。ギター1本と歌声のみでオーディエンスを釘付けにしてみせた「君と春」から、シンガーソングライターとしてのポテンシャルと存在感をまざまざと見せつける。
「ほとんどの方がはじめましてだと思うんですけど、僕は愛媛出身の20歳で、大学に通いながら音楽をやっています。今日はこれからの活躍が期待されるアーティストということで非常に恐縮ですが(笑)、よろしくお願いいたします」
続く「テイクイットイージー」、「地元の歌をやります」と奏でた「マツヤマ」でも、ギター、歌、メロディというミニマムな要素で、その街の匂いすら感じさせるような情景とノスタルジーを描き切るソングライティングが、本当に素晴らしい。拳を上げるわけでもなく、シンガロングするわけでもなく、心のもっと奥の方の気持ちを共にする。そこにいる全ての人々が歌詞に耳をそばだて、物語を共有するような独特の一体感。合わせ鏡のようにオーディエンスのフィジカルに反応させる即効性ではなく、メンタルに深く潜って突き刺さる「ダイバー」は、音楽だけでちゃんと1つになれることを見事に証明している。
そんな空気を作った後に、「僕はネクストブレイクできるのかな?(笑) 今日はそんなライブができていたらいいなと思います」とはにかんだ彼に、会場からは大きな拍手が贈られる。ラストは、大学受験の際に書いたという「オレガノ」。青春の葛藤が言葉の1つ1つから伝わってくるような苦さと瑞々しさが、その時代を楽曲に永遠に刻み付けたようなエバーグリーンさで胸に迫りくる。
目の前には、一見どこにでもいそうな20歳の青年。だが、放たれた音楽は、ここにしかない確かな輝きを魅せた全5曲。彼がMCで語った不安など軽々と吹き飛ばす、まばゆき可能性を見せた大橋ちっぽけのステージだった。
ISSEIの切れ味抜群のヒューマンビートボックスに乗せ、たたみかけるようなマシンガンラップでいきなり度肝を抜いたのは、沖縄発の新世代ラッパー、Rude-α。自伝のような「19」でまくし立て、そのままシームレスに突入した「Mirror Ball」ではオーディエンスも思わずハンズアップ。「Everybody! 楽しめるヤツはどれだけいるんだい!?」とその手を緩めずぐいぐいと熱を上げていくその光景に、先ほどとはまたガラリと雰囲気が変わったJANUS。「大阪、調子はどうですか!? みんなの声を聴かせてほしいんです!」とブチ上げた「この夜を超えて」でも、「みんなのバイブスが俺を熱くさせるから」と、絶えることなく観る者を鼓舞し巻き込んでいくこのエネルギーたるや。初見の人も多かったであろうショーケースでここまで声が上がるのは、彼の真剣なまなざしと沖縄で育まれた人懐っこさの成せる業か。
「スケベDJと社会不適合者でワーワー言うてますけど(笑)、東京に住んで3年、親元を離れて寂しいことも、うまくいかないこともあって。そのとき、末期ガンだったじいちゃんに相談したら、“自分の決めたことを後悔しないようにやれ”って。あの言葉があったから今、大阪で歌ってるし、別れはすごく悲しかったけど、最近、友達の子供が生まれたり、嬉しい出会いもある。だから、そんなみんなの感情の変化のそばにいる歌を、これからも歌っていきたい。愛を込めて歌います」
上京後の人生に訪れた紆余曲折と悲喜こもごもを、ポエトリーリーディングさながら切々と綴った「Happiness」。その言葉の持つ力とRude-αという1人の人間の生き様には、心を揺さぶされて仕方ない。3月にCreepy Nutsと韻シストを迎え、大阪で初めて開催される自主企画『TEEDA』について熱心に語る姿しかり、この男は何かと人を惹きつける。
そして、クライマックスに披露したのは「Boy Meets Girl」。アーバンなトラック上で軽やかにラップするこの曲では、ステージを所狭しと横断するRude-αの熱いパフォーマンスに応えるウエーブが生まれる。「OK、そのバイブスのままこのトレインに乗り込んでくれ!」と、ラストは「Train」でフロアをフックアップ! 最後の最後まで情熱を燃やし続けたRude-αのライブに、大器の片鱗を感じたオーディエンスは少なくないだろう。
あの「Y.M.C.A.」のご陽気なSEを背に最後にステージに登場したのは、トリを務めるヤングオオハラ。この日唯一のバンド形態での出演となった彼らは、しょっぱなの「新」から疾走感漂うロックンロールでオーディエンスの身体を揺らし、「改めましてヤングオオハラです! 調子どう? 踊れそう!?」(vo&g・ハローユキトモ、以下同)と間髪入れずに「サマタイ」を投入。ハローユキトモ、ヨウヘイギマ(g)、ミツキング(b)のフロントラインのコーラスが抜群に機能するダンスチューンは、4ピースバンドというオーソドックスなフォーマットにも関わらず、独特の語感とグッドメロディの黄金配合がとにかくクセになる。
「俺らと一緒にもっとキラキラしようぜ!」と煽った「キラキラ」でもそのセオリーは健在で、かと思えば、ノリバルカン(ds)の力強いビートに丁寧に言葉を乗せていくようなミドルナンバー「中南海」など、バンドの懐の深さを感じさせる様々なテイストの楽曲を、これぞライブな熱量とグルーヴで鳴らしていく。これでまだ結成して2年半、平均年齢20.75歳とは、いやはや恐れ入る。ブルーの照明を浴びながら、ボーカリストとしてのスケールを感じさせるハローユキトモの鋼の歌声が、JANUSの隅々まで包み込んだ「HANBUN」といい、ロックシーン云々なんて範疇では語れない才能に溢れた楽曲群には、未来しかない。
「こんなごちゃまぜのメンツのイベントはなかなかないし、お前らは音楽が好きだからここにいるんだろ? 最高だよ! 全力で拳を上げろ~!!」
最後の「美しい」では、ハローユキトモがハンドマイクでオーディエンスの魂に焚きつけ、「また遊ぼうね!」という言葉とフィードバックノイズをステージに残し、全6曲30分を全力疾走で駆け抜けたヤングオオハラ。その強烈な余韻が身体から離れない超新星たちの三者三様のライブは、ネクストブレイクの期待にたがわぬきらめきに満ちていた。
Text:奥“ボウイ”昌史
Photo:森好弘