2007年から2017年に渡り、J-MELOでは、160の国と地域から届いた視聴者からの投稿(メール、動画、写真など)の集計をしていた。1位に輝いたのは、米国(4回)、インドネシア(3回)、フィリピン(3回)、英国(1回)の4か国だけだ。
初めてインドネシアを訪れたのは2012年。首都・ジャカルタの代表的なモニュメントである「モナス」(国家独立記念塔)広場で開催された「ジャカルタ日本祭り」に、番組司会のMay J.が出演することになった時だ。会場には約2万人の観客に加え、インドネシア政府の閣僚らが集っていた。この年にデビューしたJKT48の初々しいステージングも、いまも脳裏に残っている。
ジャカルタのレストランでファン・ミーティングも開催した。番組ウェブサイトのみでの募集だったが、数千もの参加希望が現地から寄せられた。Mayと、インドネシアの人気バンド「GARASI」のボーカルでもあったアユ・ラトゥナがホストを務め、日本音楽を愛好するファンと触れ合い、語り合った。
インドネシアの人々との相互交流は、強くなる一方だった。2014年、Yun*chiが、最高学府であるインドネシア大で開催された【Gelar Jepang】(直訳すると「日本学位」)という名のイベントに招かれた。日本学科の学部生が運営しているこの行事は、日本の学園祭の規模をはるかに超えていた。メインのライブ・イベントは、大学構内の広場にロック・フェスのようなステージが築かれ、実に15,000人が押し寄せた。披露した曲の1つは、エンドテーマとして制作した「Waon*」(https://youtu.be/LDBp3-EjIx8)だ。
番組ウェブサイトに、英国、米国、カナダなど、14の国と地域の「日本のアイドルが好きな女の子」がネットで集った【IroKokoro Project】というネットグループが、ももいろクローバーの曲を動画投稿してきた。ももクロのメンバーに実際に観てもらった。世界中のファンの深い愛情に感銘を受けていた。
このグループを用いて作品を作れないかと考えた私は、音楽プロデューサーの浅田祐介さんに相談し、コーラス・データを各自から送ってもらい、新曲を制作した。それが「Waon*」だ。歌詞は、別途、世界中の視聴者が好きな日本語の単語を募集して、散りばめた。ジャカルタでのライブでは、歌詞のサビの部分をインドネシア語で歌うことを提案した。観客は熱狂した。
ジャカルタでのAFA(アニメ・フェスティバル・アジア)で開催された【アニソンライブ】の盛り上がりも世界へと伝えた。2016年のAFAのライブに出演したLiSAの歌唱と、彼女を支持する観客との「コール・アンド・レスポンス」は、感動的だった。彼女に世界に向けたテーマ曲を作ってもらえないかと思案した。成田空港での荷物受取り待ちの間に振り返ったら、本人がいた。偶然にして必然の瞬間をきっかけに生まれたのが「Halo-Halo」だ。
しかし、何と言っても衝撃的だったのは、インドネシアにゴールデンボンバーの曲をコピーする学生のバンドがいたことだ。彼らの演奏を録画し、ゴールデンボンバーのメンバーに観てもらった。彼らは映像を見て、こう語った。「すごい!本当に演奏してる。兄貴と呼びます!」。この他にも、インドネシアの皆さんとは、あまりに多くの思い出が溢れ、エピソードが尽きることがない。また、お会いしに行ける時を、楽しみにしています!Text:原田悦志
原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。