漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏さんが「星降る夜に」(テレビ朝日系 火曜21:00~)をウォッチした。
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産婦人科医・雪宮鈴(吉高由里子)と、10歳年下の青年・柊(ひいらぎ)一星(北村匠海)のラブストーリー。
一星は聴覚障害者で遺品整理士だ。
「音の無い世界」を描いたラブストーリーといえば「silent」(フジテレビ系)が記憶に新しいが、ベテラン大石静脚本の本作はまたひと味違う。
なんせ冒頭、出会った二人はいきなりキス。飲み過ぎた鈴はゲロを吐く(さすがに嘔吐シーンそのものは無し)。
遺品整理中にAVを発見した一星は、「日本のAVには伝統と情緒がある」と、熱いAVトークを手話で繰り広げる。
さらに鈴の同僚・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)はつまずいて思いっきり検尿カップにダイブ。必要だったのか? 尿まみれのおディーン様という激レア映像。
鈴、一星、深夜なんてやたらロマンティックな名前ながら、ゲロ、AV、尿まみれ。生きるってことは綺麗ごとだけじゃないんだよ!とガンガン揺さぶられる気分だよ。
そもそも産婦人科医と遺品整理士という職業が象徴する「生と死」。命の喜びと喪失の哀しみ。
毎回たっぷり生と性を謳歌(おうか)する鈴と一星のイチャイチャシーンと対照的に、終盤登場した伴宗一郎(ムロツヨシ)は憎悪むき出しの男だ。
5年前、鈴が大学病院に勤務していた時のこと。出産時に妻を失くした(新生児の女児は助かる)伴は、担当した鈴のせいだと思い込む。彼女を訴えた裁判は敗訴。職も失った伴は、ただ恨みと怒りにのまれていく。
もう、このムロが怖すぎなんよ。鈴の自宅に「人殺し」の貼り紙をしまくり、家にれんがを投げ、SNSに誹謗(ひぼう)中傷を書き込み、産院で大暴れ。
「俺は被害者なんだよ!」と叫ぶムロ。いや悲しいけどお前、もはや加害者だから。熱演すぎてホラー寄りだから。