光速を超える光、光のテレポーテーション、“透明人間”になる技術──こんな信じがたいことがいま、どんどん現実になっている。光を専門とする物理学者が古今のSFに登場する技術と対比しながら、驚異的レベルで進歩する光の科学の世界を案内する。
 光は実に奇妙な存在だ。粒子でもあり同時に波でもある。「絡み合い」という状態にある二つの光子はどんなに離れていても、片方の特性が変化すればもう片方も瞬時に変化する。量子情報のテレポーテーションが起こるのだ。謎だらけの光の特性を応用して、事実上不可能だった複雑な計算を一瞬で処理する量子コンピュータ、光を曲げ『ハリー・ポッター』の魔法のマントさながら姿を見えなくするクローキング技術などが続々登場、SFがもはや絵空事ではなくなっていることにボー然。
 アシモフ、H・G・ウェルズらの傑作小説や、「スタートレック」などの人気ドラマをたっぷり引用。ワープ航法や遮蔽装置、ビーム転送等々おなじみの技術のどれが実現可能か詳細に検討され、SFファンにはたまらん楽しさ。刺激的未来を堪能する。

週刊朝日 2014年7月25日号