「ドーナツを穴だけ残して食べるには?」ってバカ言っちゃって、ドーナツ食べたら穴はなくなるでしょ。と思うだろうが、世の中にはとんでもなくいろんな答えを出す人たちがいる。本書はこのケッタイな問いをテーマに、大阪大学の学生たちが企画・編集、販売まで行い、本文は大阪大学の先生たちがそれぞれの専門分野から考察、執筆したものだ。
 この問題はもともとネットで流行った定番ネタ。冒頭の経営学者はドーナツの穴談義がどのように発生し定着したのか、その進化の過程をたどっている。工学者は穴を形成する縁を残して機械で削るというがっぷり四ツの視点で、歴史学者は「穴がある」というそもそもの前提を疑い、法学者はドーナツの穴問題のパラドクスと法解釈との密接な関係を考える。
 ドーナツ一つで人間世界のあらゆる側面が丸裸にされることにびっくり。執筆を依頼された当初はおそらく「バカ言っちゃって」派だった先生方が、結構ハマってあれこれ考えちゃったそのワクワク感と、企画がどストライクに入った学生たちのしてやったり感が本書をいっそう楽しくしている。

週刊朝日 2014年5月9日-16日号