2月23日に閉幕したソチ五輪。数々の熱戦の中でも、とくに印象に残ったのはフィギュアスケート女子の浅田真央選手のフリー演技という人も多いかもしれません。
ショートプログラムはミスが続いて16位と大きく出遅れましたが、次の日のフリーでは攻めの演技で自己ベストを更新。観る人すべてを大きな感動の渦に巻き込みました。
4年に一度の大きな舞台。失敗が許されない局面で、選手たちがプレッシャーを感じるのは当然のこと。浅田選手が最終6位まで順位を上げたのは、ショートプログラムの失敗から上手く気持ちを切り替えられたからではないでしょうか。一方、過去には日本中から期待されて、それに応えて、また期待されて...というプレッシャーのループから抜けだせなかったある選手がいました。
それは、1964年の東京五輪で男子マラソン銅メダルを獲得した円谷幸吉選手。東京五輪が終わってすぐ、日本中は4年後のメキシコ五輪での金メダルに期待しました。しかしその重圧により、円谷選手は「疲れきってしまって走れません」という遺書を残し、わずか27歳という若さで自殺してしまったのです。
他人から期待されて、結果を出せば喜んでもらえるのは嬉しいこと。しかし、期待に応えようとする姿勢を「他人からの評価を、自分の価値を決める基準にしている」と指摘するのは、テレビなどで活躍する心理カウンセラーの心屋仁之助さん。書籍『がんばっても報われない本当の理由』の中で、「"人の期待に応えよう"とするのは、気持ちが外に向いているからです。つねに人にどう思われるか気にしてしまう」と、プレッシャーに応えないことをすすめています。
五輪のような大舞台でなくても、大きな仕事を任された、チームリーダーに抜擢された...など、日常では期待されるシーンがよくあります。心屋さんのもとには、期待に応えようとがんばって、うつになってしまった人もいるそうです。
そんな人に対して、心屋さんは次のようなアドバイスを送ります。
「失敗して、大損して、みんなをガッカリさせてもいい。あなたは存在しているだけで、光り輝いているのです。人の期待は、人のもの。あなたが応える責任がないことに、早く気づいてください」(心屋さん)
プレッシャーは挑むものではなく、応えなくていいもの。そう考えると、なんだかすっと心が軽くなりませんか?