前列右から最初のカメラのアサヒペンタックスSP、フジFinePix F200EXR。パナソニックLUMIX DMC-GH1には、アダプターを三つかませてキヤノンの昔のマクロレンズ35ミリF2.8を装着。後列が改造したコンタレックス用のプラナー50ミリF2をつけたニコンD3、そしてベッサR2
前列右から最初のカメラのアサヒペンタックスSP、フジFinePix F200EXR。パナソニックLUMIX DMC-GH1には、アダプターを三つかませてキヤノンの昔のマクロレンズ35ミリF2.8を装着。後列が改造したコンタレックス用のプラナー50ミリF2をつけたニコンD3、そしてベッサR2
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三十数年間、毎日自宅での夕食を撮り続けている村山さん。庶民の食の文化史として、次世代に残したいという
三十数年間、毎日自宅での夕食を撮り続けている村山さん。庶民の食の文化史として、次世代に残したいという
2006年12月、M42オリオン座大星雲を口径30センチのアストロカメラにキヤノンEOS Kiss Digitalをつけて撮影。赤いフィラメントがきれいだ
2006年12月、M42オリオン座大星雲を口径30センチのアストロカメラにキヤノンEOS Kiss Digitalをつけて撮影。赤いフィラメントがきれいだ
2009年8月、夏休みの1週間を過ごしたギリシャ・サントリーニ島で、パナソニックLUMIX DMC-G1に、Gバリオ14~45ミリF3.5~5.6で撮影。地中海の青とテラスの白、強い影を対比させて画面を構成。そこにパラソルの集合体が奏でるリズム感をテーマにしているという
2009年8月、夏休みの1週間を過ごしたギリシャ・サントリーニ島で、パナソニックLUMIX DMC-G1に、Gバリオ14~45ミリF3.5~5.6で撮影。地中海の青とテラスの白、強い影を対比させて画面を構成。そこにパラソルの集合体が奏でるリズム感をテーマにしているという

――カメラ歴は?

 最初の1台は、中学生のときに買ったアサヒペンタックスSPです。始まりは、京都大学の天文台で大型望遠鏡を通して星をのぞいた瞬間でした。その美しさに感激して、「一生かかっても、こんな大きな望遠鏡を手に入れる」と決意したんです。カタログを取り寄せたら、当時学校の先生の給料が1万円の時代に500万円でしたけど(笑)。それで、まずは家庭用の小型望遠鏡に取りつけて天体写真を撮ることから始めました。ペンタックスSPはスクリューマウントなので、望遠鏡につけるのが簡単だったからです。カメラはいろいろ売り買いしましたが、やっぱり最初の1台は特別の愛着があるので売れないですね。

 天体望遠鏡への夢は今も続いていて、公共天文台で不要になったものを集めて、文化遺産として次世代に残すための「天体望遠鏡博物館」というプロジェクトをやっています。もう大型天体望遠鏡が10台近く、小さいのが100台も集まりました。世界最大のコレクションではないでしょうか。

――そのほかにカメラは?

 海外出張に持っていくのは、コンパクトなベッサR2です。飛行機が離発着するときに撮るのが好きなんですが、デジタル機器の使用は禁止されてるでしょう。でも、フィルムなら問題ありませんから。宴会でよく使うのが、コンパクトデジカメのフジFinePix F200EXR。フラッシュ有りなしの2パターンの写真が1回のシャッターで撮れるのがいいんです。いちいち2回ずつ撮るのって面倒だけど、これだとバリバリ撮れるので宴会カメラとして優れものです。天体写真はもう完全にデジタルに移行しました。フィルムカメラの時代では1時間も2時間も露出していたのが今は1~2分で撮れます。しかもISO6400とかとんでもない感度でも画像は鮮明。ニコンD3なら星空を手持ちで撮れますよ。

 あとぼくはマウントコレクターでもあるので、カメラとレンズの組み合わせをいろいろ変えて楽しんでいます。面白いのは、パナソニックLUMIX DMC-GH1ですね。ミラーショックがないので天体写真や、アダプターをかまして顕微鏡レンズやマクロレンズをつけ、花の超マクロ撮影をしています。でも最高の組み合わせは、ニコンD3とコンタレックスのレンズ。とくにゾナー135ミリF4の解像度はすばらしい。コンタレックスのレンズは特殊なので、マウントアダプターが市販されていないんです。それでインターネットで見つけた香港の業者に注文して、ニコンマウントに改造しました。絞りも刻印してつけました(笑)。そうしたくなるぐらい、このレンズはすばらしいんですよ。あの名レンズがこういう形でよみがえるのかなと。レンズの進歩って、なにかなと思うんです。今のレンズ設計はコンピューターでするから、誰がやっても一応の水準にはなるわけです。だけど、昔は職人技でやっているから、同じブランドでもいろいろな差が出てくる。その中で、よいレンズを探すのが面白いんですよ。

――ライカは?

 高いカメラは興味ないんですよ。いま持っているカメラも全部中古です。ライカや大型カメラも持ってはいますが、それより2千円、3千円のロシア製カメラやレンズのほうが面白い。誰も使わないような安いレンズで、知られていない側面を見つけるほうが知的好奇心をそそります。中古カメラ屋さんで二束三文で売られているレンズをアダプター経由で現代のカメラにつけて撮る。思い切り収差が出たりして、「これ、どういう思想で設計したんかな」とか、いろいろ想像するのも楽しいんです。(笑)

――奥様はなんとおっしゃっていますか。

 もうあきらめてます。これだけあると、10台、20台増えてもわからない。木を隠すには森に入ることです(笑)。でもこの間、机の後ろに隠していた大きな超望遠レンズが見つかって、妻が「こんなところにこんな大きなレンズが!」と驚いたから、ぼくも「すごいな、レンズって3年でこんなに大きくなるんか。けっこう成長早いよね」と言ったら、なにも言わず向こうに行きました。(爆笑)

※このインタビューは「アサヒカメラ 2011年10月増大号」に掲載されたものです