人が生きているかぎり欠かせない行動の一つに、睡眠がある。それはあまりに日常的な生理現象なので、いざ不調を感じると、どうにも気になってしかたがない。そういう日本人が増えているのか、ここ数年、各メディアで睡眠に関する企画をよく見かける。
この『8時間睡眠のウソ。』は文筆家の川端裕人が、国立精神・神経医療研究センター部長の三島和夫に取材して知った、睡眠にまつわる最新の科学的知見をまとめた1冊。小説だけでなくノンフィクションでも秀作を発表してきた川端はまず、三島ら専門家が睡眠の科学で解き明かした事実を、副題にあるように「日本人の眠り、8つの新常識」として紹介する。
・日本人は世界屈指の睡眠不足
・「深い睡眠」が「良い睡眠」とは限らない
・睡眠時間は人それぞれ、年齢でも変化する
・シフトワークは生活習慣病やがん、うつ病のリスクを高める
・日本人の体内時計は平均で24時間10分
・眠くなるまで寝床に向かってはならない
・「不眠=不眠症」ではない
・こま切れの睡眠はNG
どうだろう。最初の事実はうすうす察していたが、2番目を読んだ私は思わず首をひねってしまった。睡眠においては、「深い=良い」と信じてきたからだ。また、不眠と不眠症が同じではないとは、どういうことなのか……そんな私の疑問は、三島が提示する詳細な科学的根拠によって解消していったが、睡眠にはまだ謎が多いこともわかった。睡眠の2大要素である「睡眠リズム」や「睡眠時間」に大きな個人差があり、同一人物でも発達や加齢によって変化するからだ。
とはいえ、自分なりに良い睡眠を考えるとき、この本にある「12の指針」は心強いアドバイスとなる。睡眠に問題を抱える1人として、私も読後、これらを参考に改善に取り組んでいる。
※週刊朝日 2014年2月14日号
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