『Live in Japan』 Elvin Jones Jazz Machine
『Live in Japan』 Elvin Jones Jazz Machine
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 1978年、来日ジャズ・ミュージシャンが残した作品は同日録音を含め49作にのぼる。前年の1.4倍強、それまではもちろん、このあともこれを超える年はないのではないか。半数強の25作が日本人ミュージシャンと組んだリーダー作/コ・リーダー作/ゲスト作/サイドマン作だ。やはり多くは来日の機に乗じた作品だが、加古隆(ピアノ)や中村達也(ドラムス)らの、自ら海外ミュージシャンを招いた活動から生まれた作品が目新しい。ライヴ作は20作あり7作が日本人との共演作だ。アンドオアで日本人が主役/未CD化/入手難/水準作は外し、エルヴィン・ジョーンズの『ライヴ・イン・ジャパン』(Venus)、カウント・ベイシーの『ライヴ・イン・ジャパン'78』(Pablo)、マッコイ・タイナーの『パッション・ダンス』『カウンターポインツ』(Milestone)、『深町純&ニューヨーク・オール・スターズ・ライヴ』(Sony)を候補作とした。今回はエルヴィン作を紹介する。

 ドラム史上の革命児、エルヴィンの来日は遅れた。無理もない。オクタパスと評される両手両足が見事にバラけたポリリズミックな打法を完成し名声を得るのは1960年の秋にコルトレーンのグループに参加してからのことで、在団中に来日の機会はなかったのだ。退団から1年後の1966年11月、エルヴィンは「第3回ドラム合戦」の一員で来日する。不運な巡り合わせと言うべきか盟友はその4ヶ月前に最初で最後の来日を果たしていた。12年後の1978年4月、エルヴィンはレギュラー・グループ「エルヴィン・ジョーンズ・ジャズ・マシーン」を率いて再来日する。東京公演がライヴ収録され、同年に『ライヴ・イン・ジャパン1978~ディア・ジョン・C』(Trio)が、三度目の来日となる1980年に『ライヴ・イン・ジャパンVol.2』が来日記念盤として発売された。一作目が“Vol.1”とされなかったのは二作目を出す予定がなかったからか。推薦盤はこれらを完全収録する。

 グループはツイン・サックス、ギター、ベース、ドラムスという変則クインテットだ。幕開けはエルヴィンの《E.J.ブルース》、モーダルなリフナンバーでブルースではない。ハード&ブライトなトーンでテクニカルに吹き連ねるフォスター(テナー)も上々だが、ハード&ソルティなトーンでエモーションを絞り出すラバーベラ(テナー)が断然光る。フォスターの《ハウス・ザット・ラヴ・ビルト》は作者自身のテナーのショーケースだ。コルトレーン流に、バラードはクリーンに綴りテンポを上げると思いのたけをぶつける。一作目の白眉はコルトレーンの《至上の愛》だ。馴染みのバンプが始まると歓声が湧く。フォスター(テナー)とプリンスが主役に立つ〈承認〉は決定打を欠くが、エルヴィンのロング・ソロ、それに続く〈決意〉は文句なしの快演となった。ラバーベラ(テナー)とフォスター(ソプラノ)が熱く躍動的なソロを繰り広げ〈承認〉への非承認を打ち消す。

 二作目はケイコ夫人に捧げた《ケイコズ・バースデイ・マーチ》から始まる。マーチ・ドラミングにバッキングに一際冴えるエルヴィン、ハード・ドライヴィングで歌心に富むフォスター(テナー)にラバーベラ(ソプラノ)にプリンスと、快演の連続に頬も緩む。コルトレーンの《ベッシーズ・ブルース》ではフォスターもラバーベラもテナーを吹くが熱くならずスマートに仕上げて格好いい。カリブ海はアンティグア島の出身、プリンスの《アンティグア》が二作目の白眉だ。フォスター(テナー)とラバーベラ(ソプラノ)が快演ならプリンスもなかなかの好演、それぞれのソロの3コーラス目でラテンビートからフォービートに切り換わる瞬間はジャズ・ファンなら誰しもゾクっとくるにちがいない。お仕舞いは再び《E.J.ブルース》だ。フォスター(テナー)とプリンスの出来がいい分、幕開けの演奏を凌ぐ。エルヴィンが怒涛の大団円を導き、熱いコンサートに幕が下りる。

 独立後のエルヴィンはどうもという方もあるだろう。筆者もかつてはそうだったが今は良い意味での保守性に魅力を感じる。結局は前衛に傾斜する前、モードに邁進した時期のコルトレーンが好きだということにほかなるまい。コルトレーン系のツイン・サックスを擁したグループでエルヴィンは伝統に立脚し盟友との交感を甦らせようとしたのだろう。東京公演の演奏にもモダン・ジャズの王道を直向きに歩む彼の熱気と覇気が満ちている。惜しむらくはプリンスが半数はそつなく弾き流したソロに終始し、その曲の評価を下げていることか。まあ、《ハウス・ザット・ラヴ・ビルト》《ベッシーズ・ブルース》を除く5曲でエルヴィンのパワフルで頭脳的、退屈しないソロが満喫できるので良しとしよう。一作目が準快作で二作目が快作、僅差で二作目が勝るものの《至上の愛》は捨てられず、どちらもお聴きいただきたい。バラ売りは一作目が入手難で徳用二枚組を推薦盤とした。[次回2月17日(月)更新予定]

【収録曲一覧】
Live in Japan / Elvin Jones Jazz Machine (Jp-Venus [Jp-Trio])

[Disc 1] 1. E.J.Blues 2. House That Love Built 3. A Love Supreme: Part I. Acknowledgement - Part II. Resolution
[Disc 2] 1. Keiko's Birthday March 2. Bessie's Blues 3. Antigua 4. E.J.Blues (reprise)

Elvin Jones (ds), Frank Foster, Pat LaBarbera (ts, ss), Roland Prince (g), Andy McCloud (b).

Recorded at Yomiuri Hall, Tokyo, April 8 and 9, 1978.

※このコンテンツはjazz streetからの継続になります。

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