『SLAM DUNK』『バガボンド』などで知られる漫画家の井上雄彦氏が、プロレス漫画に挑戦しました。



現在、「週刊ヤングジャンプ」で連載中の車イスバスケ漫画『リアル』。11月末に発売されたコミック13巻では、まる一冊分を使って「プロレス」にまつわるストーリーが描かれています。



『リアル』は、元バスケ部の野宮朋美、車イスバスケ選手の戸川清春、交通事故で脊髄を損傷した元バスケ部キャプテンの高橋久信の3名が、車イスバスケという競技を通じて現実と向き合う物語。



同作に登場したのが、「日本一のヒール」とも呼ばれるプロレスラーのスコーピオン白鳥。彼もまた交通事故で腰椎を損傷してしまい、高橋と同じ部屋に入院します。同巻では、白鳥のプロレス復帰戦が描かれています。



「今年の8月に初めてプロレスを観戦した」と語るのは井上氏(書籍『KAMINOGE vol.24』より)。それまでプロレスとさほど接点はなかったといい、今回の取材が初めての試合観戦となりました。



感想は「なんか凄いことになっていた」。新日本プロレス「G1クライマックス」最終戦に登場した棚橋弘至、オカダ・カズチカ、中邑真輔らの姿を観て、昔のプロレスラーに対するイメージと違い「すごくカッコいいプロレスラー」が多いことに驚いたそうです。



同作でプロレスを描いているうちに「プロレスって少年漫画みたいだな」との感想を抱いたとも語っています。



「まず、"キャラを立てる"っていうことが絶対に必要だし、その中で毎回毎回、"やられた。どうすんだ、これ?"で続くっていう。それと、やせ我慢をすることだったり、独特な技の名前とかそういう部分でもそうでしょうし、それらが全部、少年漫画を描いていた人間からすると、"凄く親和性が高いな"と思うんですよね。今回は少年漫画を1冊描いたような感覚でしたから」(井上氏)



今回の主役となった白鳥は、悪役レスラーであり障害者。そんな白鳥にまつわるドラマの部分は、20代の頃は描けなかったとも語っています。



「プロレスは少年漫画っぽい衣をまとってはいるけど、中身はちゃんと大人が読めるドラマがあるのかなと思います。プロレスで惹かれる選手って、なんか厚みっていうか、背負ってきたものとか、いろんなものを感じますもんね」(井上氏)