マンガに描かれた「食」の紹介本。圧倒的な読書量と調査能力に目がくらむようだ。巻末の「作品名索引」を見てみると、ずらりと200のタイトルが並んでいるが、本当はそれ以上のネタがあった模様。「本当はもっと書きたかったが、原稿段階で『こりゃ入りきらないな……』と泣く泣く割愛した作品がいくつも」あったのだという。マンガにおける食の幅広さと奥深さに驚かされる。
『美味しんぼ』や『花のズボラ飯』のような「グルメマンガ」はもちろんのこと、食をテーマにしていないマンガの食についても取り上げている。たとえば『ドラゴンボール』において、主人公である悟空の食事シーンが描かれていたのは連載初期であって「〈1粒くえばゆうに10日間は飢えをしのげる〉という〈仙豆〉を手に入れて以降、食事シーンはほぼなくなる」という。そして戦闘シーンが増えていくにつれ「情緒的描写よりもバトル」に重きが置かれ、食にまつわる表現が減ってゆく。よく知っているつもりだった人気マンガも、食に着目してみると「別の顔」が見えてくる。

週刊朝日 2013年11月15日号