野村さんがいつもバッグに入れて持ち歩いているニコンクールピクスS700。写真は液晶画面でトリミングしたりして編集し、完璧な作品にしていくのが楽しいという。できあがると不要なものはすぐに消去する。「私、いらないものは捨てていくタイプなので」とほほえんだ
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ホテルの一室でくつろいだ瞬間、「膝小僧にぶつけたあざがあったんですよ」と自らを撮影。日常的に写真を楽しんでいるのがわかる
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東京・若林の環七通り沿いの桜を強烈に逆光を入れ込んで撮影。花びらの一つひとつの生命観を表現したいとアップでとらえた
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藤沢・江島神社の鳥居越しに立ち上るような樹木の枝ぶりに生命の息吹を感じてシャッターを切ったという。夕方6~7時ごろ、月も出てシルエットが美しい
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――カメラはいつから?

 モデルをしていた19歳のころからカメラマンの友人がたくさんいたので、写真は身近な存在でした。作品やいいカメラをいただくことも多かったんです。いただいたコンタックスで、11歳年下の妹を撮影したことがありました。小学生の妹にメーキャップして、キャミソールを着せて、オーガンディのスカーフを巻いて……家の階段に寝そべらせながら「手の位置はこう。もっと力を抜いて」なんて注文をつけて、すごく楽しかったですねえ(笑)。私、子どものころから「スコラ」や「プレイボーイ」などの男性誌にのっている女性のグラビアを見るのが大好きだったんです。撮られる妹は嫌がっていましたが。(笑)

 本格的に撮るようになったのは、2年前に友人のカメラマンの出版パーティーに出席してからです。「こんど仕事でアフリカに行く」という話をしたら、その場にいたカメラマンの方に「絶対にカメラを持って行ったほうがいい」と熱心にすすめられて。「撮った写真の連載ページも作るから」って会場にいたカメラ雑誌の編集部の方まで巻き込んで、話をどんどんすすめてくださるんですよ(笑)。ニコンのカメラも手配してくださったんですが、一眼レフで撮るというほどではなかったので、コンパクトタイプのデジカメでとお願いしたところ、いただいたのがこのクールピクスS700だったんです。

――クールピクスS700を連れた旅はいかがでしたか?

 撮った作品をその場で編集できるのがすごく楽しかったですね。もともと風景は撮るより心に焼きつける主義だったので、旅先ではあまり写真を撮らないんです。いちおうは空港でレンズ付きフィルムを買って行くのですが、毎回5、6枚しか撮らない。だから、現像に出そうにも残りのフィルムを持て余していました。アフリカでも結局、数枚しか撮りませんでしたが、このときはすぐに「どうかな?」と写りを見られるので、その写真をクールピクス上で編集していました。朝、満タンにしたデジカメの充電が夕方には切れてしまうくらい、移動中はずっと編集作業をしていたんですよ。(笑)

――編集はどのように?

 たとえば、遠くから撮った動物の写真をズームインしたり余分な背景をカットしたりして、近くにいるような臨場感を出していくんです。写真を一枚のキャンバスとして、撮った作品を自分のイメージに近づけていくのが面白いですね。とりあえず撮りたい風景をおさえたら、あとは倍率を変えたりトリミングしたりしながら、いろいろなバージョンを2、3枚作ってみるんです。気に入った作品に落ち着いたら、編集したものだけを残してオリジナルは消去。気に入らなかった写真も消去、消去です(笑)。人から「いい写真があるかもしれないから消さないほうがいいよ」と言われますけど、自分にとって不要なものは取っておきたくないんですね。編集するのってちょっと大変だけど、そこまでやって撮影完了です。たくさん撮った写真の中から一枚を選ぶより、ワンショットでおさえた写真から完璧な一枚をつくりあげたい。撮る行為よりも、その作品をどう完成させるかのほうに興味があるみたいです。

――自然の風景を撮った作品が多いですね。

 はい。ふだんはどうしても自然を撮ることが多くなってしまいますね。海外や発展途上の国の人びとと出会うと、がぜん撮影意欲がわいてきますが、日本ではなかなか心動かされる場面に出合うことが少ない。なので、都会では木や空など、偽りのない自然の景色を撮ることが多くなるのです。でも、撮らない日でもバッグのポケットにはいつもクールピクスが入っているんですよ。ふだん頻繁には使わないけど、黙ってそばにいてくれて、必要になれば用を果たしてくれる。そんなクールピクスS700は、私にとって「かわいいお友だち」なんです。

※このインタビューは「アサヒカメラ 2009年7月号」に掲載されたものです