昨年は1stフルアルバム『穴』のリリースや初の単独公演開催など、飛躍を予感させる動きが多かった3ピースロックバンド Walkingsが、昨年12月23日に東京 Shibuya Milkywayにて新作リリースに伴う自身2度目のワンマンライブを開催した。
2016年に台頭したニューカマーのロックバンドといえば、SuchmosやD.A.N、Tempalay、Yogee New Waves、yahyelといった名前がまず挙がると思うが、彼らもまた、その一角に加えられるべきだろう。写真から想起されるところもあると思うが、Walkingsはサウンドもグッといなたく、いびつでけたたましい。しかし、ルーツを感じさせる音の深みや一撃で圧倒する衝撃度であれば、それらを凌駕するほどのインパクトがあるのも事実だ。
では、実際にはどういった音を鳴らすバンドなのか。今回紹介するライブに合わせてリリースした4th EP『genius』収録曲「さらばエンディング」のミュージックビデオが現在YouTubeで公開されているが、言葉で伝えようとするのであれば、この日披露されたカバー曲を知っていただくのが早いかもしれない。
今回のカバーは計4曲。序盤のジミ・ヘンドリックス「ファイア」に始まり、中盤には自身らの影響を及ぼしたであろう楽曲として、ミシシッピ・シークス「シッティング・オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」、はっぴいえんど「はいからはくち」、BUMP OF CHICKEN「ダイヤモンド」の3曲を彼らは演奏した。
ジミヘンやはっぴいえんどは昔から広くカバーされているが、ミシシッピ・シークスに関してはその名を初めて目にした人も多いだろう。1930年代に活躍したアメリカ南部出身のカントリー / ブルース・バンドで、「シッティング・オン・トップ・オブ・ザ・ワールド」はフランク・シナトラやボブ・ディラン、そしてWalkingsのメンバーが敬愛するジャック・ホワイトなどもかつてカバーした名曲である。
実に80年以上も前から世界的に愛されてきたルーツ・ミュージックが、BUMP OF CHICKENと並ぶ。メンバーの高田風(vo,g)が愛器にしているクリーム色のフェンダー ストラトキャスターからもわかる通り、彼らはいわゆる古き良きロックを追っているように映るし、実際にそうした音楽も嗜好しているだろう。ただ、それだけではない。
Walkingsは常々、時代を言い訳にしない音楽を意味する“全時代ロック”を標榜しているが、ともすればクラシックとされかねない時代の音楽から、現代の日本のチャートに上がるヒット曲までを咀嚼し、自分たちだけの音楽としてアウトプットする。現代の若者らしい雑食性と深い造詣に裏付けされた、たくましく本格志向の新感覚ロック・サウンド、それが彼らの音楽の大きな魅力なのだ。
加えて新人ながら作品のタイトルに“genius=天才”と銘打つ大胆な不敵さである。同じく映像がYouTubeに公開されている「無駄」「ロック」「あんたがいったじゃん」などの楽曲タイトルも潔く、「GuitarSolo」ではそれぞれが卓越した演奏力で、この日のライブでも観衆を圧倒した。
タバコの煙をくゆらせたようなただれたグルーヴも、観る者も含めて狂乱する激しいアクトも、自在にこなす新星らしからぬプレイヤビリティ。今の日本の音楽シーンにこそ求められるべき素養を兼ね揃えているバンドといえるのではないだろうか。今年も1月11日に渋谷 Clubasiaで開催されるイベントへの出演が決定しているので、まだ未聴というロック・ファンにはぜひWalkingsのライブを、今こそ体験して欲しい。
撮影:MASAHIRO SAITO
◎【Walkings 「genius」レコ発単独公演】
2016/12/23(金・祝) at 東京 Shibuya Milkyway
[セットリスト]
01.無駄
02.さらばエンディング
03.風神とライジング
04.ファイア(ジミ・ヘンドリックス カバー)
05.挽回のダンス
06.いざ異国行こうか
07.ベネフィット
08.ハロークリスマス
09.NIVEA
10.21世紀の原始時代
11.シッティング・オン・トップ・オブ・ザ・ワールド(ミシシッピ・シークス カバー)
12.はいからはくち(はっぴいえんど カバー)
13.ダイヤモンド(BUMP OF CHICKEN カバー)
14.GuitarSolo
15.ロック
16.あなたとわたし
17.台風
18.あんたがいったじゃん
En.I am 俺
※フォトグラファー MASAHIRO SAITO氏のオフィシャルサイトにて、ライブ写真公開中:http://www.i-m.mx/tokyoartshelter/Masahirosaito/
◎Walkings ライブ情報
【Ajam(#7)】
2017年1月11日(水) 東京 渋谷 Clubasia
出演:Gateballers、テコの原理、mandala、Walkings
DJ:遠藤孝行(New Action!)、TANACHU(Season/Alegre)、斎藤雄(Getting Better)、nakaotaichi(Diamond Juke/v.o.c)、かたしょ(COMMUNICATION BREAKDOWN)