全国的な猛暑、異常な集中豪雨、その逆に極端な少雨となった地域。気象庁も今年の夏(6~8月)を「異常気象」と位置づけた。
とは申せ、異常気象はもちろん過去に何度も起こっていたわけで、田家康『気候で読み解く日本の歴史─異常気象との攻防1400年』を読むと、為政者は常に天候との戦いを強いられていたことがわかる。
たとえば奈良時代。当時の為政者を悩ませたのは干ばつによる飢饉である。そのために取られた最大の施策は、寺社による雨乞い!
干ばつと飢饉は天然痘その他の疫病の源ともなる。飛鳥時代から奈良時代にかけ、200年間に21回もの遷都が繰り返されたのは、厄災続きの都市から去りたいという願望に加え、巨大建造物の建立ラッシュによる森林破壊が影響していたという。山林は保水力を失い、畿内は恒常的な水不足の状態にあった。
干ばつに悩んだ古代とは逆に、中世は冷害との戦いの時代だった。大雨、洪水、台風、あるいは寒波。大飢饉の中で治安も悪化。日本では応仁の乱(1467~77年)がはじまる40年ほど前から冷夏と長雨による飢饉が多発するようになる。
でも、なぜそうなった? 地球的な規模で見ると、古代は温暖期、中世は寒冷期(小氷期)に当たり、さらにその原因を探ると、太陽の活動の強弱と火山の噴火による「火山の冬」が重大な影響を及ぼしていたという。西暦1300年頃を境にした温暖期から寒冷期への移行。〈地球規模で気温は温暖化と寒冷化を繰り返している〉のである。
今般の地球温暖化には人為的な要因もそりゃあるだろうが、それだけともいいきれない。太陽活動は21世紀に入って低下しており、ここしばらく大規模な火山噴火もない。いずれまた寒冷期が訪れないという保証もないのだ。江戸時代から今日まで、日本は40~50年サイクルで飢饉に見舞われている。直近の凶作は1992年。すると次は……。温暖化より寒冷化のほうが私は怖いな。
※週刊朝日 2013年9月27日号