伝言板に書かれたメッセージ
伝言板に書かれたメッセージ

 昨年の9月、JR総武線の錦糸町、亀戸、小岩、市川の各駅に「街あわせくん」という名のデジタルボードが登場。スマホなどで専用サイトにアクセスし、希望の駅に伝言を投稿すると、伝言板を模したデジタル画面にメッセージが表示される。

 市民コンサートの告知やワールドカップのサッカー日本代表を応援するメッセージ、家族や知人への感謝の思いなど、これまでに数千件のメッセージが投稿されたという。2月には新たに千葉駅にも設置された。

「伝言板の本来の役割である“個人的なメッセージ”は今ではメールやLINEで代用できる。その代わりに“公衆へ向けたメッセージ”をSNSのように伝えられるツールとして利用されているというのが興味深い。若い世代の人たちから見ると、伝言板というスタイルが平成レトロっぽくて新鮮に感じられているのではないか」(枝久保氏)

 年末年始に伝言板が設置された池袋駅で“伝言板世代”の高齢者たちに声を掛け、「伝言板の思い出」を聞いてみた。取材に応じてくれた人の半数ほどが「利用したことがある」と答えた。

「伝言板にはいいエピソードがあるよ」と告白してくれたのは60代の男性。

「当時、好きな女性がいてね。その日、付き合ってくださいと言うつもりで、彼女の最寄り駅で待ち合わせしたんだけど、いつまでたっても来てくれない。会社に電話をしたら、もう会社を出たという。自宅の電話も出ない。伝言板に『大事な話がある。いつもの喫茶店で待つ』と書いて、2時間くらい待ったでしょうか。彼女が『ごめ~ん』と申し訳なさそうに駆け込んできた。そのころには、もう待ちくたびれて告白するのは後日にしようと思ってたんだけど、彼女が言うんです。『デートは来週だと勘違いしていた。伝言板を見てビックリした。ところで大事な話ってなあに?』って。それで告白して成功して、付き合い始めた彼女が今の嫁さんです」

 人と人をつなぐ伝言板がある社会もいいものだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2023年3月17日号

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