毎日、猛暑日や大雨など、荒天が続いていますが、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
くれぐれも、お身体こわさぬように、ご自愛くださいませ。
と、時候のごあいさつをしたところで、今回は、ジョージ・ベンソン。
前回、2008年8月の東京ジャズ以来、5年ぶりの来日だ。新譜『Inspiration: A Tribute to Nat King Cole』にあわせてということだから、アルバムからのナット・キング・コールのナンバーと往年のヒット曲、人気曲の演奏ということになるようだ。
さて、まずは、ナット・キング・コールについて。
わたしにとって、ナット・キング・コールといえば、TVシリーズの「ナット・キング・コール・ショー」だ。それも、テレビ放送というより、LDで見たものだ。
このコーナーの別のコラムでも書いているが、LDとは、VHSビデオとDVDの間にあったメディアで、30cmLPと同じ大きさで、DVDを大きくした感じの映像つきのメディアだ。
わたしが持っているのは、『ザ・ナット・キング・コール・コレクション』、LD7枚組。
ここに、TVシリーズの「ナット・キング・コール・ショー」が収められている。
この映像、1950年代中ごろのテレビ放送ということもあり、昔の白黒放送の画像である。
40年代スイング・ジャズの時代の映像を見ると、白黒であっても想像以上に美しいので驚くが、調べてみると、それらは、ニュース映画や当時流行った映像つきのジューク・ボックスのために作られた短編映像用であるらしい。
それに比較すると、50年代とはいえ、当時のテレビ用の画像は、やはり劣ってしまう。少し、残念ではある。
しかし、そこに残っている内容は、素晴らしい。
TVシリーズの「ナット・キング・コール・ショー」についての情報が、ネット上でもあまりないようなので、山口弘滋氏のLDの解説書を参考にかいつまんで紹介する。
TV「ナット・キング・コール・ショー」は、50年代、アメリカの大衆娯楽が、ラジオからテレビに移行した時代、スター歌手によるシリーズ化された番組が人気を集めていた。シリーズ化は、スター歌手のステータスにもなっていた。
そうした時代に、黒人スターとして、初めてシリーズ化の番組をもったのがナット・キング・コールだ。56年11月から57年12月までの1年間続いた。
番組構成は、コールが歌うテーマソング、ゲストの歌、そして、最後は、コールがさまざまなナンバーを歌うという流れだ。
まず、なにより、コールの声がよい。そして、ポピュラー歌手であり、ジャズ歌手であり、ジャズ・ピアニストであり、映画スターでコミカルなエンターティナーでもある多彩な魅力にくわえて、彼の人柄のよさが伝わってきて、気持ちがよい。
ゲストも、素晴らしい。エラ・フィッツジェラルド、JATP(ジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック)、ジューン・クリスティ、サミー・デイヴィス・ジュニア、トニー・ベネット、ハリー・ベラ・フォンテなどなど。まだまだ、たくさんいる。
という映像で、ナット・キング・コールを楽しんできたわたしだが、もちろん、ジョージ・ベンソンも大好きだ。
ベンソンとの出会いは、はい、大ヒット盤『ブリージン』だ。
当時、クロスオーバーなどという言葉もあり、わたしとしては、それらのジャンルに大きな興味はなかったのだが、このアルバムは、愛聴盤になった。それから、彼のジャズ・ギタリスト時代、ビートルズをカバーした『other Side of Abbey Road』、各種ライヴ・アルバムなどを聴いた。
それから、忘れてはいけないのが、マイルスとの演奏だろう。
ちょうど、夏休みで、実家に帰っているので、本棚から「新マイルスを聴け!」中山康樹著を持ってきて開いてみた。「マイルスを聴け!」(1997年発行)のヴァージョン3である。
その『マイルス・イン・ザ・スカイ』の2曲目、《Paraphernalia》を引用すると「ジョージ・ベンソン(ギター)初参加の知性と教養に満ちたスイング感。」とある。
悪くない評価だ。
ナット・キング・コールも、ジョージ・ベンソンも、楽器を演奏し、歌もうまい、声もいい、そんな二人の出会いが、素晴らしい一夜を与えてくれることだろう。
それに、ジョージ・ベンソンは、こどものころから、ナット・キング・コールが好きだったようである。アルバムを聴けばわかるはずだ。[次回8/21(水)更新予定]
■公演情報は、こちら
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/george-benson/