著者はお笑いコンビ「オードリー」のツッコミ担当。2008年に漫才コンテスト「M-1グランプリ」で2位を獲得したとき、初めて「社会というものに自分が参加しているという感覚」を味わったという。
 本書は2008年を自身の「社会人一年目」と定めるところから始まり、社会人4年目の「卒業論文」で締めくくられるエッセイ。30歳にして始まった社会人ライフについての考察は、初々しさと、独自のネガティブ思考によって支えられている。
 たとえば、人と話す時に足首を猛烈に回してしまうマネージャーにどう説教したらよいかひどく悩み、「足首を回すな!(感情ストレート型)」「足首回すのやめたほうがいいよ(微笑みつつしっかり刺す型)」「それ摩擦で火が出て火事になったら怖いからやめてくれ(煙巻き型)」の3パターンを考え、その一方で、自分もかつて先輩にこのような気遣いをさせていたのであろうことに思い当たる。「説教の中の愛はすぐには芽吹かないのかもしれない」……おかしさの中から見いだされる真理には、なんとも言えない魅力と説得力がある。

週刊朝日 2013年7月19日号

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