日本がTPPに参加すれば、約40%しかない日本の食料自給率がさらに下がるとみられる。農業はどうすれば生き残れるのか。
 農業ジャーナリストの著者は本書で、農業史を検証しつつ農業の未来を提示している。
 戦後の日本は、食生活が洋風になった。著者によると、家畜の飼料から米国産になり、いわば米国の「食料の傘」に入った状態だという。その結果が、国内の農業の苦戦である。
 著者は、「食の内需拡大」につながる農業のあり方を説く。ひとつのモデルが埼玉県の金子農場だ。水田、畑、山林を持ち、米を中心に小麦や大豆、野菜などを有機栽培で作り、乳牛や鶏なども飼う。農業と畜産を一体化させた複合経営である。その循環のなかで、飼料も自給。産直で消費者の食をまかなう。こうした、小規模だが生産性の高い農場を全国に増やせば、結果的に内需が拡大するという。
 著者は、東日本大震災後、被災地の農家がこう語るのをテレビで見た。「大きな田んぼが水びたしになり、農業機械を入れられない。小さな田んぼなら人力で復旧できるのだが」。ハッとさせられる言葉だ。

週刊朝日 2013年4月5日号