ベストセラー『おひとりさまの老後』の姉妹本。同書が老後の快適なシングルライフを提案する高齢世代のための自助本であったのに対し、本書は周辺世代も視野に入れ、著者の自分史や世代間の問題を新たに取り上げる。いわば『おひとりさまの老後』の続編であり舞台裏にあたる。
特に興味深いのは、インタビューを通じた著者(1948年生まれ)の自分史だ。学生運動で経験した男性への失望、そこで気づいた女性学/女友だちの重要性、両親の死を看取ることで得た死生観などが語られ、女性学と親/夫/子どもに頼らない(頼れない)「おひとりさま」というアイデアとのつながりがよく理解できる。著者は社会学は“経験科学”であって必ず現実に基づくと述べるが、本書で語られていることは、一人のフェミニストの口述資料としても価値がある。
後半の世代論争では、社会学者としての著者の本領が遺憾なく発揮される。ライフスタイルの問題を超え、社会構造を通して「おひとりさま」をマクロな視点で眺め直すのに最適な一冊である。
週刊朝日 2013年3月29日号