昨年7月、『たたかえ!てんぱりママ』という本を出した。定価1470円。息子が私立中の担任から体罰を受けて退学、転校先の公立中でクラスメイトにいじめられて不登校に陥った時期のエッセイである。
あの頃、誰も良い相談先を教えてくれず、自分で何もかも調べなくてはならなかった。私のようにひとりで苦しんでいるお母さん達がきっといるはずなので、相談先情報を織り交ぜつつ、少しでも癒しになればと本にまとめたのだ。
本を出して半年……。癒されていたのは、逆に、私のほうだった。まず、ツイッターで、いじめ問題について研究をされている内藤朝雄先生の存在を知った。学校の中では「いじめっこ」「教育熱心のあまり、やりすぎる先生」などと特殊な言葉でくるんでいるけれど、それがいけない、一般社会と同じように「加害者」と言ったほうがいい、というような主張をされていて、心底胸がすっとした。
さらに、内藤先生のツイッターの周辺とAERAの記事で、『「指導死」親の会』の大貫隆志さんを知った。教師に何時間も叱責されることで発作的に死を選ぶ生徒さんが過去に何人もいることを知った。私の息子も教師3人に囲まれ2時間以上説教され、学校のトイレにひきこもったことがあったのを思い出して、背筋が寒くなった。執拗な説教が子どもをどれほど追いつめるか、そしてこれも暴行なのだと目が覚める思いだった。
何人かからは、
「母子家庭だし、あなたの育てかたがいけないのでは」
「お子さんが打たれ弱すぎる。いじめをすぐ乗り越えられるお子さんだっているんだから」
などと、まるで息子にこそ問題があるような言われかたをされてきた。息子と共に世間からつまはじきにされた気がして何が正しいのかわからなくなり、3年ほど小説がうまく書けなくなった。
おふたりに本をお贈りしたところ、お忙しいのに読んでくださり、丁寧な感想メールもいただいた。最近の学校にひどく歪んでいる部分があることをわかってらっしゃるおふたりに本をご評価いただけたことで、やっと前を向いて生きていける気がした。
最近の私は過去数年で一番働いている。ついに自分を取り戻せたのだと思う。これからは今まで味わった苦しみも反映させつついい原稿を書いていきたいと思っている。