養子縁組の現場では、「授かる」「迎える」といった表現が主流で、「もらう」という言葉は使われない。24年前に特別養子縁組で女の子を“もらった”著者は、あえてこの言葉を選んだ。「神様から特別にもらった」という意味と、「もらわれてきた子」という偏見に負けない強さを身につけてほしいという願いを込めたからだ。
 本書は、実親との縁をなくし、養親の実子として縁組する特別養子縁組制度で、生後40日の女の子を受け入れた女性の記録。
 小さな命を抱いた瞬間にとめどなく流れた涙。娘が幼い頃から、自分の言葉で真実を伝えるという決意。娘が成長し、何でも話し合える間柄になった喜びなどが率直に記されている。
 不妊や養子縁組など、内容は深刻だが、著者の明るく前向きな生き方ゆえか重さはない。また、「養子だから不幸だと思ったことは一度もない」という娘が、昔を振り返る章は、養子側の心情がよく分かり、読み応えあり。
 「血よりも濃い水」が確かに存在し、その繋がりの素晴らしさを如実に物語る一冊。

週刊朝日 2013年2月15日号