ハワイでは夜に現れる虹は「最高の祝福」だと捉えられてきた。珍しい“ナイトレインボー”に魅せられた自然写真家が、虹を求めて世界を巡る旅と、そこで出会ったハワイ先住民の叡智をつづるフォトエッセー。
 闇の中にぼんやりと浮かび上がる夜の虹は、実に幻想的。遭遇の経緯も不思議なもので、著者は夜中に突然予感がして出かけていくと、そこに虹があるということを何度も経験した。まるで自然の意思が働いているかのようだったという。
 夜の虹を教えたハワイアンはヒーラーで、人の病気の原因は心そのもの、たとえば怒りの感情だと語る。彼らの間では虹の7色は肌の色の違いを表し、虹は異なる民族が共存する平和な社会の象徴でもある。その哲学に一貫してあるのは「感謝と赦し」だ。
 著者は電子工学を学んだあと自然写真家になった変わり種だが、科学一辺倒にも神秘主義にも走ることなく、目にした奇跡に素直に感動する。大いなる存在に素朴に敬意を払うことは、心に浄化をもたらす。世の争いを絶つ力はここにあるのかもしれない。

週刊朝日 2012年12月21日号