ヒトの目はなぜ前についているのか、ほかの動物よりもたくさんの色を認識できるのはなぜか。そこには驚異的ともいうべき目の能力が隠されているという。「透視」「未来予見」など4つの超能力に見立て、従来とはまったく異なる視点から視覚のメカニズムを探る画期的研究である。
両目が前についているのは物を立体的に見るためとよく言われるが、実際には片目でも生活にさほど支障はない。両眼視が真に威力を発揮するのは、森のような障害物に囲まれた環境だという。葉や枝で遮られて見えない部分があっても、少し視野のずれたもう片方の目が見えない部分を補う。顔から突き出た鼻が邪魔にならない理由がまさにこれ。顔の両側に目があるパノラマ視は視野こそ広いが、森の中では両眼視のほうが何倍もの視覚情報を得ることができるのだ。
透視だの未来予見だの、言葉は突拍子もないが、著者が用意した視覚実験を試すと、まさしく自分の目がその突拍子もないことをやっているのがわかる。盲点をつく謎解きの連続に思わず興奮させられる。
週刊朝日 2012年12月7日号