ドラマ内のアイドルグループ「アメ横女学園芸能コース」の衣装やキャストのサインも

「あまちゃん」は、のんさん演じる天野アキと母の春子(小泉今日子さん)、祖母の夏(宮本信子さん)の親子3代を軸にした物語。架空の「北三陸市」と東京を舞台にし、東日本大震災も描いている。

 13年4~9月に放送され、反響はすさまじかった。リズミカルなオープニングテーマは夏の甲子園の応援曲にも使われ、北三陸市民の名セリフ「じぇじぇじぇ」はその年の流行語になった。岩手県には全国から観光客が押し寄せ、岩手経済研究所(当時)は、県への経済効果が約33億円に上るとの試算を発表した。

 久慈市中心部から車で小袖海女センターに向かった。アキが海女として働くシーンを撮影した場所だ。ドラマが放送された13年度、前年度比40倍の20万3千人が来訪した。スタッフに聞くと、新井田正子さん(57)が「ドラマに出ていた灯台や監視小屋を見に来る人が毎年いますよ」と笑顔を見せた。欠畑きわ子さん(69)は「のんさんにまた来てほしい。撮影中と同じように煮干しか何かを焼いて一緒に食べられたらうれしいね」。

 ドラマに登場する鉄道会社のモデルの三陸鉄道にも足を延ばした。旅客営業部長で、震災当時は久慈駅長だった橋上和司さん(58)は「ドラマ放送時は『この先、三鉄はどうなるんだろう』と、先が見えないような状況でした」と振り返った。駅舎、橋梁、線路が流失するなど、全線で計317カ所に被害を受けていた。

 橋上さんは社の「あまちゃん担当」に任命され、ロケの案内役も担った。ひたむきに生きる登場人物たちの姿に、「ドラマの存在に救われました。三鉄が今はどん底でも『前進できるんだ』って思わせてくれたんです」。

■のんさんを軸に全国とつながる

 ドラマを追い風に同社が始めたのが、車内に「あまちゃん」の装飾を施した貸切列車(久慈‐普代間)の運行だ。乗客25~30人を乗せガイドが案内する。21年度は60本、22年度は113本(2月16日現在)走り、来年度の予約が入るほどの人気だ。

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