本書は「誰か教えてくれよぉ、未亡人になるとどうなっちゃうの?」という著者の悲痛な叫びから出発している。夫を悪性リンパ腫で亡くした時代小説家は、冒頭から前途多難だ。
 看取りの感傷に浸る間もなくさっさと病室を引き払い、すぐさまお葬式の準備に突入。さらに、子ナシ夫婦の未亡人だから、遺産相続も複雑だ。そんな修羅場をくぐり抜けた後に待っていたのは、まさかのウツ。人と会うことはもちろん、電話にも出られなくなった。それでも、少しずつ仕事を再開し、亡夫を偲ぶ会を開き、「ひとりでもやっていける」と思えるところまでたどり着く過程を追っていると、悲しみよりも希望が強く感じられ、読み進めるのが楽しくなってゆく。
 小説家ならではのリアルな心理描写と、必ずや多くの未亡人たちを助けるであろう実務的なアドバイスの数々、そして、未亡人という存在の文化的・歴史的背景に至るまでが、一冊の中にぎゅっと詰まっている。未亡人世代はもちろん、結婚を夢見る若い世代も、後学のために読んでおくべき一冊だ。

週刊朝日 2012年10月26日号

[AERA最新号はこちら]