吉原には「男おいらん」がいた......。そんなことを何年も前からずっと妄想している。
吉原の一番奥の木戸を抜けると、そこには十軒ほどの遊郭があり、張り見世では女物の着物で着飾った男遊女が微笑んでいる。彼らは化粧はしていない。今時のスリムな男子がさらりと花柄のシャツを羽織っているようなそんなノリなのだ。
私の脳内でだけ動いていた彼らを、このたび、FPアドバンスさんのプロデュースで舞台化していただけることになった。タイトルは、そのまんま「男おいらん」。このような設定で果たしてオーディションに応募があるか心配だったのだけど、意外にも選ぶのに迷うほどのエントリーが集まった。
なぜ来てくれたのかと聞くと「今までの舞台とはひと味違う感じがする」と言ってくれた役者さんが多くてとても嬉しかった。さらに「女物の着物を身につけてみたい、おいらんになってみたい」という役者さんも何人もいた。結構彼らもこの設定を楽しんでくれているのだ。
実は、男おいらんというアイデアを舞台化しようとしても難題が山積みで、今まで実現させることができずにいた。まず、若い男性のほとんどは着物を着たことすらない。それに彼らの衣装はどうするんだろう、というところで止まってしまっていたのだ。
しかし今回は強力な味方が現れた。日舞の先生をしている女性で、おいらんの着物も含めて衣装をたくさんお持ちで、それらを無償で貸してくださるというのだ。さらに全員に着付けと仕草の稽古もつけてくださるという。なんてありがたいことだろう。
ということで、舞台は12月だというのに、着物の動きの学習のため、早くも稽古に突入した。先週は男物の着物の練習をした。今週は女物の着物の練習をするという。男物、女物、どちらが似合うかで配役を決めていくのだそうだ。
そして舞台の宣伝写真を和風の場所で撮影しようということになり、さあどこで撮る? とまた立ち止まった。すると茶室をお持ちのかたが「うちの部屋をタダで貸すから好きに使っていいよ」と声をかけてくださった。
思いがけず大勢の人のご協力をいただきながら盛り上がっている「男おいらん」プロジェクト。男遊女という私の妄想が目の前に次々現れてくれるので、いま、本当にワクワクしている。