私はメディカルハーブ検定なるものを取得しているほどの、薬草好きである。そんな私には、一度試してみたいハーブがあった。

 それは『セントジョーンズワート』。気分の落ち込みをやわらげる効果があると言われている。再び太陽のように明るくなれるからなのか、アメリカでは『サンシャインサプリ』と呼ばれ、人気があるらしい。

 先日、仲良しの男の子との関係が崩れた。多分私たちはもう、前のように仲良くはなれない。かなり落ち込んだその瞬間、このハーブのことを思い出した。『困ったことが起きたら、このハーブをお使いなさい』と過去の私が囁いてくれたかのようだった。

 で、ハーブショップでセントジョーンズワートティーを420円で買って、飲んでみた。すっきりした味で、わりと飲みやすかった。お茶一杯だけでは何も変わらないだろうと思っていたのに、30分後、彼のことを思い出しても悲嘆にくれず、むしろ微笑んでいる自分がいた。

(彼とはもう会えないかもしれないわ。でも、彼に巡り会えただけでも、よかったじゃないの......)

 この安らかな心持ちは果たしてハーブのおかげなのか、いわゆるプラシーボ効果なのかわからない。私は、ほんとに信じやすい。だからよく男にも騙されるわけで......。単に温かいお茶を飲んだから、心も身体もぽかぽかしてきただけなのかもしれない。でも、気持ちがラクになったのは確かだった。

 その後も続けて数日飲んでいるのだけれど、沸点がかなり低くなった自分がいる。今までは、息子がナマイキなことを言うとすぐにキー、とキレてケンカになったのに、今では笑顔でかわすことができているのだ。このごろ小魚せんべいをぱりぱり食べているから、カルシウムが充足されているからなのかもしれないけれど。

 おかげでここ数日、とても穏やかな日常を送っているのだけれど、正直、それが物足りない。あの胸を締めつけられるような哀しみや指先が震えるほどの怒りが、恋しい。感情が限界まで達した時に浮かぶギリギリの言葉達に再会したい。私って結構不安定な精神を愛する人だったんだなあ......。