仕事優先でがむしゃらに働いてきた均等法第1世代(50代半ばから60歳くらい)と、育休から復帰し働くことが当たり前の世代(20、30代)に挟まれた氷河期世代の40代。女性たちは働き方に悩んでいる。AERA 2023年3月13日号の記事を紹介する。
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昨年11月のサッカーW杯カタール大会期間中、ひとつのメッセージに注目が集まった。
「Dear My BOSS Thank you For MY 2WEEK OFF!」
現地で観戦していたNTT東日本の坂本一平さん(29)が画用紙に書いて掲げたもので、「BOSS」とは、所属する神奈川事業部の課長の女性(46)のこと。2週間の休暇を「いいんじゃない」とあっさり認めてくれたとして話題となった。女性は言う。
「私自身は子育て中で、子どものイベントや発熱などで休むことがあり、いつも周囲に助けてもらっています。仕事へのモチベーションも高まるのであれば、彼にとっても休暇は良いと判断しました」
女性は1999年、新卒で同社に入社。35歳で出産後、規定いっぱいの3年間の育休を取得し、4時間の時短勤務で復帰したという。徐々に勤務時間を延ばして、子どもが小2の時にフルタイムに。翌年、43歳でマネージャー職になった。同社内で増えつつある女性マネージャーのひとりだが、入社当時は全く描いていなかった未来だという。
「少し上の世代で女性マネージャーというと、いわゆるバリキャリ。子育て中の女性マネージャーはあまりおらず、男性上司は長時間労働。出産と子育てをしたいという夢があった自分には、ちょっと無理かな、と」
考えが変わったのは、コロナ禍でリモートワークが可能になったことだったという。加えて、こんなことも頭をよぎった。
「同世代で子育てをしながら、マネージャー職にチャレンジする女性が出てきた。会社員生活はあと20年ある。その間、何もチャレンジせず、今後、後輩女子たちも子育てしながらマネージャーになっていくのを見ると、後悔するかもしれない」
その言葉に大きくうなずくのは、静岡県立大学の国保祥子准教授(経営学)だ。育休中に復職のヒントを探すセミナー「育休プチMBA」の代表で、多くの働く女性に接してきた国保さんはこう指摘する。
「いまの40代は、『働き方端境期』の世代です。超氷河期に社会に出て、上は均等法第1世代で、下は育休からの復帰がほぼ100%のワーママが当たり前の世代。両者に挟まれながら、どんな働き方がいいのかを、ずっと悩んできました」
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2023年3月13日号より抜粋