先日、チラシに目が止まった。イサムノグチの母を描いた映画「レオニー」が公開されると知った。私は子連れで北海道や高松のイサムノグチ作品を観に行くほどのファン。早速ツイッターで「この映画を観に行きたい!」とつぶやいた。
翌日。誰かが私のツイッターのフォロワーになっていた。名前を見て仰天した。その映画を撮った松井久子監督だったからだ。フォローの御礼メールをお送りすると、なんと試写会にお招きいただけた。
映画には胸をえぐられるようなシーンが続いていた。言葉もわからない日本で、シングルマザーとして日本人との子を必死で育てるレオニー。彼女に周囲が浴びせるのは「国に帰ればいいのに」などの冷たい言葉。それでも子どもの才能を守りながら前向きに生きる彼女に涙がおさえきれなかった。
私も女手ひとつで数学が得意な男の子を育てているので、『子どもを育てるということ』の偉大さを描く映画のメッセージがダイレクトに伝わってきて、胸が震えた。なので、上演終了後、思いがけずお茶に誘ってくださった監督に「どうしてシングルマザーに焦点を当てたのですか」とズバリ尋ねてしまった。そして私はそこで松井監督自身もまたシングルマザーだったことを知った。
監督は以前、まだそれほど話題となってなかったアルツハイマーを取りあげた映画「ユキエ」を作った。そのテーマがクローズアップされるであろうと感じたからだという。そして事実そうなった。
監督がイサムノグチの母、レオニーを描いたのは、強く逞しく異国で生き抜くシングルマザーという流れの源流を彼女の人生に感じたからかもしれない。実際、最近はハワイなどに子連れで移住したりやカナダに子どもを留学させるシングルマザーも出てきている。レオニーのように国境を軽々と越えてシングルマザーが活動する日はすぐ近くまで来ているのかもしれない。
映画の感激を、シングルマザーのためのNPO法人を運営する友人・新川てるえさんに話すと、映画を応援したいと言い、監督のご厚意もありあっというまにシングルマザー限定試写会が実現した。普段映画になかなか親しめないシングルマザーにこそ、この映画を見てもらいたい。