元女性隊員自身も「ほぼ毎日抱きしめられる」などのセクハラを受けており、五ノ井さんが日常的に被害にあっている場面も目撃していたという。元女性隊員によると、この部隊は2018年から女性隊員が入るようになり、その時から、「セクハラがヤバイ」として悪評が立っていた。セクハラをしているグループの中心は、20代後半の男性隊員数名で、他の隊員は上下関係から、逆らうことができず、ただ見ているだけだったという。
だが、この日のセクハラ事件は、中隊でも問題となった。事件を目撃していた誰かが、中隊長に報告したからだ。すぐに「中隊長に告げ口したのは誰か」と、犯人捜しが始まり、被害者である五ノ井さんが疑われた。加害者からは、「セクハラじゃなくて、コミュニケーションの一部だもんな」と声をかけられた。事情聴取として曹長から呼び出された五ノ井さんは「何もありません。大丈夫です」と報告した。問題が大きくなり、組織に居づらくなるのを避けようとしたからだ。
「自衛隊には厳しい上下関係があって、その場の空気に合わせなければならない。和を乱せば、無視や陰口を言われますから」(同)
■セクハラを超えた性被害を受けて限界に
この日以降、五ノ井さんは気持ちを押し殺しながら日常的なセクハラに耐えてきたが、昨年8月に我慢の限界に達する出来事が起きた。
8月3日から地方で約1カ月間の訓練があった。訓練場所に到着した日の夜、部屋で食事の準備をしていた五ノ井さんは、男性隊員から「料理はいいから接待しろ」と言われ、男性隊員十数人の輪の中に座らされた。宴会だったので、隊員らは酒を飲んでいた。
一曹Eと二曹Yが格闘の話をしていたところに、男性隊員S三曹が部屋に入ってきた。するとEは、Sに「五ノ井に首をキメて倒すのをやってみろ」と命令した。Sは、五ノ井さんの首に両手を当てて、そのままベッドに押し倒すような技をかけた。
「この時、Sさんが暴走し始めたのです。股を無理やりこじ開け、腰を振りながら陰部を押し当ててきました。一人で『あんあん』とあえぎ声みたいな声を出して、それを見ている周りの男性隊員たちは笑っていました。特にEとYはこっちを見ながら確実に笑っていました」(同)