仕事をしたり地域で交流をしたりして、町をつくっているのは地元の人たち。みんなの思いをすべて拾うのは大変だが、広くアンテナを張れるようになった。この人と一緒に何かやりたい、自分ができなくてもこの人ならできるという意識で、町全体でやればいいという発想になれたのは、大きく成長できた部分だという。
「この町は廃れていく一方だという言葉の裏側で、地元の人たちは来てくれる人たちに期待しているんです。地元の人と、移住したいと考えている人との間でミスマッチが起こらないように、移住コンシェルジュとして等身大の陸前高田を、背伸びせず正直に伝えて町に人を迎えたいと思って活動しています」
移住は、何かを成し遂げたいとか前向きな理由だけじゃなくていいと話すのは、彼自身がUターンを決めた理由のひとつに「都会から逃げたい」という思いがあったからだ。
「普通に暮らすことは、大切だと思うんです。都会のよさもあれば、地方のよさもある。移住すれば何かを失うリスクだってあると思います。でも、その変化を、こんなもんだよねって気楽に考えてもらえたらいいなと思います」
人口1万8000人ほどの陸前高田市。最初は“どこどこのお兄ちゃんだよね”と言われ、話しかけられるのにためらいがあったが今ではそれにも慣れた。彼が移住してから経過した時間の分、着実に“高田人”になってきているということだろう。
(構成/生活・文化編集部 清永 愛)