高田市のシンボル的存在の「奇跡の一本松」。震災後、一度伐採され、保存処理が施されている
高田市のシンボル的存在の「奇跡の一本松」。震災後、一度伐採され、保存処理が施されている

 陸前高田市は津波によって大きな被害を受けているため、平地に家は建てられない。結果、高台の土地代が高くなり、1Kのアパートの家賃も5万5000円から6万円と、東京近郊のベッドタウンと大差ない価格になっているのだ。

 高田暮舎が運営する陸前高田市の空き家バンクは、物件の間取り紹介だけでなく、この家だからこそ楽しめる過ごし方や、家主さんのおすすめポイントなどが書かれている。それは、「空き家の所有者」と「空き家の利用を希望する人」のマッチングを大切にし、不一致をなくすためでもある。

 たとえば、家主(所有者)が陸前高田から離れて生活していて家だけが残っていることもある。周りから見たら空き家でも、家主にとっては空き家ではなく自分の家なのだ。この人だったら貸し出しても大丈夫だと家主に思ってもらい、借りる人にも家のストーリーを知ったうえで、大切にしてもらえるようにマッチングしているそうだ。

「僕も今、家を借りているんです。最初は仮設住宅に住んでいたんですが、取り壊されることになって。お酒の席で、知り合いのおじさんに、仮設住宅を出なくちゃいけないので家はないかと聞いたら、ここを紹介してくれました」

松田家ので育ったレタス。スーパーで買う必要がないほどの大豊作で、自然の恵みに感謝する日々
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 紹介で借りることとなった立派な一軒家には、松田さんと妻の二人で住んでいる。

 この家は震災前、地域でも面倒見のよさで有名だった女性が住んでいた。震災時は、ボランティアたちの宿泊場所にもなった。
「春夏秋冬、家の周りに花が咲くんです。亡くなったお母さんが庭を大事にされる方だったそうで、それが今でも残っているんです。雑草だと思って刈ろうとしたら花だったようで、花が好きな奥さんに怒られたこともあります(笑)」

 地域おこし協力隊として着任する前は、町のために何かしなきゃ、仕事としてしっかり関わらなくちゃといった気持ちが強かった。
「この町の人が幸せかという漠然としたことより、隣のお父さんが楽しく暮らしているかとか、あの家のお母さんが困っていたら寄り添うとか、そういう身近にあることが一番大事なんじゃないかなって考えに変わってきました」。

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