仮に人類が乱婚だった場合、オスは自分の子どもを見分けられないので、メスや子に食料を運ぶ行動が進化しません。
しかし一夫一妻制なら、ほぼ確実に自分の子であるため、「より多くの食料を運搬できる能力」が、自分の遺伝子を残し増やすことにも強く結びつくのです。食料運搬仮説は、人類が類人猿から分かれ進化した理由として、現在最も有力な説となっています。
「複数の相手と子孫を残したいと思うのが人間の本能」
そんな浮気の言い訳、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
もうお分かりのように、進化の観点から見れば、この言い訳は説得力が弱いのです。一人のパートナーと絆を育むのが、人類の原点といえるでしょう。
もちろん、霊長類の中にも、テナガザルのように一夫一妻的なペアを作る種はいます。ただし、人類以外の種はペアごとに離れて暮らしていて、集団の中でペアを作ったのは、人類が初めてでした。
また、類人猿の場合、一夫多妻でも多夫多妻でも一夫一妻でも、メスは子育てをします。ただ、オスが子育てに参加するかどうかは、場合によって違います。人類は一夫一妻になることで、オスも子育てに参加するようになったと考えられているのです。
(構成/ライター 澤田憲、生活・文化編集部 野村美絵)