車両の扉位置が一致しない

 従来の可動柵のようにホームドアをホーム端から離れた位置に設置するのであれば、扉位置が異なる複数の車種が停車しても、柵と列車の間に乗り降りする客が動ける十分なスペースを確保できる。

 だが、「列車に近接した位置にホームドアを整備すると、車両の扉位置が一致しないという課題への対応が必要となってきます。大開口等の特殊な仕様が必要となり、技術的な課題が大きい」(JR東日本)。

 JR東日本が管轄する東北新幹線にはE6系、E5系、E3系、E2系、H5系と、5種類の車両が走っている。そのため、「今後のホームドア整備については、車両の投入計画等も見据えながら導入に向け検討を行っていきます」(JR東日本)。

 JR西日本の山陽新幹線ではN700S系、N700A系、N700系、700系、500系とやはり5種類の車両が走行している。「さらに16両、8両といった編成両数が異なる車両を運用しており、これに対応するため、大開口の可動柵を開発する必要がありました」(JR西日本)。

東北新幹線「東京駅」のホームには「ホームドア」が設置されていない
東北新幹線「東京駅」のホームには「ホームドア」が設置されていない

開閉速度を巡るせめぎ合い

「大開口」のホームドア開発にはどのような技術的課題があるのか?

 JR西日本のグループ会社で、ホームドアを製造するJR西日本テクシアに尋ねた。

「弊社では開口幅が5000ミリを超える製品を『大開口』と呼んでおります。扉が大きくて重いので、お客様が扉と接触した際のリスクが高くなります。そのため、制御の仕方や安全装置の完成度を高めるのに苦労しました。図面上ではうまく作動するように見えても実際にものを作って動かしてみると、なかなかうまくいかない。試作品を何回も作って試験を繰り返しました」

 ドアをゆっくりと動かせば接触した際の危険度は下がる。しかし、ドアが長大なので開閉にはそれなりの時間を要する。

「施主であるJRさんからは、『列車の運行ダイヤに影響を与えないように何秒以内に開け閉めしてください』と指示されました。けれど、ある程度動きを遅くしないとお客様の安全が保てない。そのせめぎ合いでも結構苦労しました」(JR西日本テクシア)

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