6月17日、JR東京駅で車いすの男性が東北新幹線のホームから線路上に転落し、救助された。ホームドアが設置されていれば防げた事故だったが、となりのJR東海の東海道新幹線ホームにはホームドアが設置されている。東北新幹線の管轄はJR東日本だ。記事の前編<<東京駅の新幹線「ホームドア」JR東海にはあるのにJR東日本にないのはなぜ? 実は全く異なる設置基準>>では、各社で異なる新幹線のホームドアの設置基準について関係者に聞いた。この後編では、新幹線をきっかけに始まったホームドア導入がいま技術的な課題や費用の壁に直面している現実を取材した。
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実はホームドアの導入と新幹線には深いつながりがある。
日本で最初にホームドア(可動柵)が設置されたのは、JR熱海駅の新幹線ホームである。
「新幹線熱海駅の構造は他駅とは異なり、列車がホーム横を通過することから、ホーム上の安全確保のために1974年に可動柵を設置いたしました」(JR東海)
山陽新幹線の新神戸駅にもやはり待避線がなく、「当時(77年)は通過列車が設定されていたため、その風圧対策として可動柵を設置しました」(JR西日本)。
つまり当初、新幹線のホームドアは通過列車から乗客を守るためのものであり、ホーム端から少し離れた位置に設置されていた。
「可動柵自体はかなり以前からあるものです。その後、バリアフリーの基準がどんどん変わっていきました。それに合わせて国はホームドアの整備目標を掲げ、補助金を出すなどの設置支援をしていきました」(国交省鉄道局)
変化するバリアフリーの基準に沿ってホームドアも進化した。現在主流のタイプは線路に面するホーム端に設置されるもので、車両ドアの開閉と合わせて可動する扉があり、ホームと線路を仕切ることで転落事故や列車への接触事故を防ぐのを目的としている。
ところが、このタイプのホームドアを新幹線に設置するのは容易ではなかった。