山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「第7波で考えるワクチン追加接種」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

【東京都内のBA.5の割合と感染速度の予測はこちら】

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 新型コロナウイルス感染症の感染拡大が止まりません。Our world in dataによると、2022年8月1日時点の新規感染者数は20万2,823人であり、先進国7カ国の中で最多となっています。

 勤務先のクリニックでも、発熱や風邪症状を認める人の受診が後を絶ちません。連日、一日あたり100件を超えるPCR検査を実施し、7割ほどで陽性を認めている状況が続いています。内科だけでなく小児科の受診もとても多いようです。「子どもが熱を出して……。看病していたら私も熱が出てきました」という声が、内科でもよく聞かれています。

 厚生労働省のデータによると、第7波における年代別の陽性者数は10代から30代に多く、高齢になるにつれて少なくなる傾向を認めています。要因の一つとして、新型コロナウイルスのワクチン接種率の差が挙げられるでしょう。2022年8月1日時点の3回のワクチン接種を終えた割合は、12歳から19歳が34.3%、20歳代が48.0%、30歳代が51.7%、50歳代が77.7%、70歳代が91.0%です。現在、2回までの接種が推奨されている5歳から11歳の2回接種率は16.9%と、高齢者ほどワクチン接種率は高く、若年になればなるほど接種率は低いのが現状です。

 しかしながら、若年者でより感染が広がっている要因はそれだけではなさそうです。2022年8月1日に「PLOS BIOLOGY」に掲載されたYanshan氏らの研究チームの最新の報告によると、オミクロン株はそれまでの新型コロナウイルスの変異株と比較して、成人よりも小児の鼻により感染しやすいようなのです。

 Yanshan氏らが成人や小児の鼻から採取した上皮細胞を使用して行った研究の結果、大人に比べて小児の鼻の上皮細胞の方が、新型コロナウイルスをより食い止める傾向はオミクロン株では弱まっており、オミクロン株は他の変異株に比べて小児の鼻の上皮細胞で、より容易に増えることが示されたのです。彼らは、今回の研究結果と、オミクロン株流行下で小児の感染者数が多いことは辻褄があうと言います。

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シンガポールにおける5歳から11歳の小児のデータでは…