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加藤:戦争はある種の化学変化を人の心にも起こしてしまうんですよね。
佐藤:方々で化学変化が起きているんです。だからキューバ危機時代のケネディ元米大統領とフルシチョフ元ソ連首相、米ソで初の核軍縮を実現したレーガン元米大統領とゴルバチョフ元ソ連書記長がやったように良い方向への化学変化を岸田首相にも期待したい。殺傷能力のある兵器を送れないんだから、そこを逆用すればいいわけです。
加藤:日本は武器を送れないしばりがある国だとしても、アメリカと軍事同盟を結んでいますよね。首相は絶対しばられるしかないのでしょうか。
佐藤:アメリカの軍事同盟で最大の相手国はイスラエルです。イスラエルは、ロシアに制裁もしていないし、ウクライナに殺傷能力のある兵器も送っていません。アメリカとの軍事同盟を切り離して、ウクライナ戦争から距離を置くことに成功したんです。イスラエルにできて日本にできないことはないと思います。イスラエルの友人に聞いたのですが、「我が国は国力がなくて非常に小さい国なので、周辺諸国との緊張だけで手いっぱいです。ウクライナとかロシアとか難しい問題に巻き込まないでください」と説明しているというのです。
加藤:日本もアメリカの軍事同盟国ではあるけど、「すみません。私たちは中国、朝鮮半島、ロシアに一番近い国なんでいい関係でいたいんです。私たちの立場をわかってください」というメッセージを発信してもいいと思うんですよ。日本の立場が世界の市民に受け入れられる説得力を持てばアメリカ政府も応じざるを得ないでしょう。そもそもそれが 民主国家の意味だと思うんです。
佐藤:あるべき姿って、平和だと思うんですよね。人が人を殺し合う権利なんていうのは、誰にもないと思うんです。キリスト教でも殺すことなかれといいます。どんな宗教でもそうです。マルクス主義者も「平和のための戦い」とずっと言っていたわけです。
(構成/編集部・三島恵美子)
※AERA 2023年3月6日号より抜粋
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