他のYouTuberやインスタグラマーなどのインフルエンサーも、「子供に障害がある」「複数の子供を育てるシングルマザーである」「ブラック企業に勤めている」などのお金で買えない経験がきっかけとなって事業をスタートしている人が少なくありません。現状を改善しなければならない状況があるからこそ、成功した部分もあるのでしょう。

 さらに短絡的な話をすると、YouTubeには「不幸系」というジャンルがあります。父子家庭の女子高生やブラック企業に勤めるOLなどの「少し不幸な人」がお弁当を作ったり日常をアップしたりするジャンルです。配偶者に浮気されたというジャンルは、ブログやTwitterでも「サレ夫」「サレ妻」などのワードでアクセス数が多いジャンルです。義理の実家の人にいじめられている、などの属性もアクセスを集めています。これは、「人がひどい目にあっているところを見たい」という本能的なインサイトに起因するものなのかもしれません。

 エンタメは、「演者がひどい目にあっている」方がウケます。バラエティー番組でも、路線バスを乗り継ぐ旅や、辛いものを食べきれるかの挑戦など、人がつらい目にあっている番組は人気です。YouTubeも同じ原理で、「実家が太くて高学歴で、多くの国に留学した経験のある起業家の日常」よりも、「実家が貧しくてお金がないから段ボールの家を自作する」ような企画の方がウケます。成功した話よりも失敗した話の方が良く、騙された経験やうまくいかなかった経験の方が再生されます。低収入や低学歴や過酷な環境という一般的にはマイナスな性質が、YouTubeではプラスに転じるのです。

 以上のことを鑑みると、YouTuberになるのに必要な経験は、お金で買える類のものではないと言えます。「履歴書に映える経験」はお金で買えるものもありますが、「YouTubeで映える経験」はお金では買えない(お金を払っても買いたくない)類のものと言えます。人生で起こる経験は、いつどのように役に立つのかはわかりません。あまりにも不幸な経験を持っているのなら、それをブログやYouTubeやTwitterで発信して「ネタ化」すると、多くの人を惹きつけたり元気づける可能性もあります。経験は、人それぞれですが、インフルエンサーの意見としては、本当に必要なのは、経験自体よりも経験を生かす能力だと考えます。

著者プロフィールを見る
なーちゃん

なーちゃん

なーちゃん/二児のママ兼YouTuber。2014年にチャンネルを開設。長男・こうちゃんと出演する動画は子どもから親まで幅広い層から人気を集め、”ファミリー系YouTuber”としてカリスマ的存在に。登録者数209万人、総再生回数13億回(2019年10月時点)を誇る。

なーちゃんの記事一覧はこちら