ボクシングにしろ格闘技にしろ、観る側がやたら饒舌に批評家まがいの持論を展開したり、自分の思い通りにならない試合や選手や審判、しまいには運営にまで好き勝手なことを捲し立てるのは昔から定番ですが、今や「駆け出し格闘家」たちのやっていることはそれに近いレベルのイチャモンや罵詈雑言だったりするのですから始末が悪い。
しかも、それら中傷合戦の場所のほとんどがネットやSNS上というのも、男らしさの欠如に拍車をかけます。ネットで繰り広げられる格闘家同士の口喧嘩を、ネットニュースが切り取って、ネット民が加勢する。臨場感も一触即発の緊迫感もエンタテイメント性も皆無です。これが今風の見せ方であり、自分の感性が古くなったのだと納得しようと努力はしてみているものの、その中身が「お前の母ちゃん出ベソ」的な、目も当てられない稚拙なものだったりした日には、根っからの「男好き」である自分の嗜好が阿呆らしくすら思えてきます。ホモが男に幻滅したらおしまいです。
最後にひとつだけ言えるのは、育ってきた環境がどんなに満ち足りないものだったとしても、自己主張と自己顕示欲ばかりに溺れている内は、いかに拳や言葉を使おうと、男としてはさほど大成しませんよということ。究極の「男社会」であるゲイの世界が教えてくれたことです。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2023年3月10日号