高麗人参購入後、玉本はA子さんの身辺から消えた。雪の日から2年以上たった今年4月10日、田口陽子と名乗る女から電話がきた。玉本の後任だという。そのころA子さんは、自分の墓を作ることを考えていた。田口に墓石について相談したところ、「墓をつくる前にあなたの背後にある霊界を変えた方がいい。浮かびきれない先祖がいるから」といわれた。
翌11日、憂鬱な思いのA子さんを田口が迎えに来て、ホワイト・キャッスルの霊場に伴った。この日から約2カ月間、骨までしゃぶりつくそうとする霊感商法の司祭たちと、最後の抵抗を試みるA子さんの修羅の日々が始まった。
霊場ではカミヤマという50年配の声を持つ女の先生が出てきた。先生はA子さんを驚愕させた。「あなたの長男が命を取られる番がきている」と宣言したからである。長男は高校生で、大学受験を来年に控えていた。1300万円の多宝塔を「授かる」と、助かるということだった。
「1人になって考えたいから帰してください」とA子さんは頼んだ。すると、カミヤマ先生が「あなたは帰るんですか。息子が死んでもいいんですか」と叫んだ。午後2時に始まった押し問答が夜10時になっても終わらなかった。A子さんは帰りたい一心で、多宝塔の購入契約を結んだ。
災いのもとは財です
田口陽子ともう1人、ノグチという女性がA子さんにつきそい、銀行3カ所を回って定期預金の解約を手伝った。印鑑、高麗人参、多宝塔を合わせると、すでに1499万円を霊感商法に捧げていた。だが盲人といえどもA子さんは、太ったカモだと相手は踏んだようだった。
5月の終わり、田口が迎えに来て、「カミヤマ先生の先生に会わせる」といってきた。今度は霊場ではなく、八幡西区八千代町のビデオセンターに連れ込まれた。原理運動に魅かれる人が、さかんに出入りし、教えを学ぶ場所である。カミヤマ先生の先生であるエンジョウジ先生は、「ゴマ祈祷するので思っていることを全部書きなさい。資産も全部書くこと」とA子さんに命じた。1枚の紙に、人生でもっとも大事なことを書き、封筒に入れて密封し、それを開封することなく燃やす、と先生はいった。
6月7日、田口の呼び出しに応じて霊場に行ったA子さんに、エンジョウジ先生が恐ろしいことをいった。