「NO CHICKEN」運動の広がりを狙い、韓国の大型スーパーである「ホームプラス」は大盛りチキン1箱6990ウォン(約715円)というダンダンチキンの販売を開始した。驚くほどの安さと量、さらにおいしいと評判に。一日当たりの販売量が限られているため、毎回販売開始とともに売り切れてしまう。

 筆者も8月6日午後、ソウル市東大門区にある「ホームプラス」を訪ねてみた。ダンダンチキンの前には販売開始30分前から長蛇の列。販売から5分で売り切れた。列に並ぶひとりは、「ネットで『NO CHICKEN』のポスターを見て、高い価格に執着するフランチャイズチキン店に復讐(ふくしゅう)したい気持ちが募った」と語った。

安いダンダンチキンを求める長い列(ホームプラス・ソウル市東大門区)
安いダンダンチキンを求める長い列(ホームプラス・ソウル市東大門区)

 「復讐」とまでいわせる韓国の庶民感情への刺激は、「bbq」の尹洪根(ユン・ホングン)会長のひとことからはじまった。今年3月、あるラジオ番組に出演し、「チキン一つに3万ウォンが妥当」と発言したのだ。ただでさえ物価高に苦しむ国民は激怒した。昨年12月、「bhc」が値上げしたのだが、このときに「うちは当分値上げしない」といっていたはず。ところが「3万ウォンチキン発言」の直後の5月2日、「bbq」は人気メニューの価格を最大2千ウォンも引き上げると発表した。ウクライナ紛争による小麦粉など材料価格の上昇や、新型コロナウイルスによる物流配送の滞りなどが理由だった。

 韓国人がさらに怒りをあらわにしたのは、「bbq」が日本で展開する「bb.q オリーブチキンカフェ」の価格だった。

 同社は東京と大阪、奈良県などに23店舗を展開。5月10日に価格改定を公表したが、その引き上げ額は30~100円と、韓国の半分以下だった。ネットでは「日本はウクライナ紛争の影響を韓国の半分しか受けない国なのか」「日本人には特別に優遇し、自国民は無視するのか」と怒りが加熱した。高いチキンを買う人々を「チキンフランチャイズの奴隷」と卑下するコメントもよせられている。

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強気な大手フランチャイズ店