「娘は天国に旅立ってしまいましたが、私の心の中ではずっと生き続けています」
そう語った松田聖子だが、まさに彼女の中に沙也加さんがいるかのように、伸びのある声で瑞々しく歌い上げていた。
その後、アコースティックのコーナーとなり、1984年リリースのアルバム『SEIKO・TOWN』収録の曲『とんがり屋根の花屋さん』を初めて披露。1984年の作品を2022年に初披露。そして、それを生で聞けるって奇跡的! 時空を超えた感じがある。
アコースティックのコーナーでは、恒例なのか、会場のファンからのリクエストに応えて、松田聖子が歌い出す。コロナ禍でなければ、会場のファンから「青い珊瑚礁!」などとコールが飛ぶところだろうが、今は大きな紙やボードなどに書かれた曲を、次々にアカペラで歌っていく。しかも、舞台の上手(かみて)から下手へと、ゆっくりとファンが掲げた紙を見て、歌えない曲があると、
「さよなら」
と、ツンデレな感じで無下にスルー。会場からは笑いがこぼれる。また、歌詞を少し間違えると、
「今の間違っていたよね!?」
と、ファンに聞き返す。1小節だけ歌っていくものの全部で10曲以上、全てアカペラで、出されたお題(曲)を即興。どんだけヒット曲があるんだ! 大ヒット曲でなくてもアルバムの中の名曲など、ファンが待ち望む曲が何曲あるんだろうか、と驚く。前日のコンサートでは歌わなかった『蒼いフォトグラフ』も披露し、もうお腹いっぱいだ。
そろそろアンコールかなと思うところで『マンハッタンでブレックファースト』が流れ、一旦、舞台袖へ。『時間の国のアリス~Alice in the world of time~』がかかると、なんと、遊園地にあるようなコーヒーカップに入って登場! 薄いピンクのヒラヒラ衣装のスカートをカップにひろげ、ステージの電飾もアレンジも遊園地のよう!
遊園地で思い出したのが、1984年の『Touch Me.Seiko Fantastic FLY in Campus Concert』。構成・演出は作家の伊集院静氏で、日本武道館の中央に(当時)初の円形ステージをセットしたもので、伊集院氏は「メリーゴーランドが星空を飛んで行くイメージ」と語っていた。当時、中学3年生だった筆者は、日本武道館に『Fantastic FLY』を見に行っていた。スマホもない時代に、どうやって子どもがチケットを取ったのか全く覚えていないが、コンサートのことは鮮明に記憶にある。