戦術核兵器使用に関して明文化された基本原則があるならば、国家としてそれに則って判断すると思いたいところだ。しかし、メドベージェフ氏自身はそういう文書に基づく冷静な議論は好まず、聖書も引用しながら言葉による「核の威嚇」を繰り返してきた。ロシアのタス通信(9月3日)は「メドベージェフは偉大なロシアを守る最良の保証は核兵器の武器庫だと考える」と題する次のような記事を配信した。
「メドベージェフは、核大国を崩壊させようという死のゲームがどうなるかは、火を見るより明らかだ。人類の“最後の審判の日”が来るのである、と述べた」
7月にも「ウクライナがクリミア半島を攻撃した場合、最後の審判の日が来る」と聖書を引用して脅した。5月には「西側の武器支援が続けば、(ロシアとの)代理戦争となり、全面核戦争になるかもしれない」と述べた。
こうした「核のプロパガンダ」はロシア人の心にどんな影響を与えているのだろうか。ロシアの世論調査機関レバダセンターは6月、次のような調査結果を発表した。
- 「ウクライナでの状況は、ロシア・NATOの軍事紛争に転化すると思いますか」
はい 48%
いいえ 42%
- 「西側との戦争になった場合、プーチンは軍に核の先制使用を命じると思いますか」
間違いなく 10%
おおいにありうる 24%
ありそうもない 36%
絶対ない 22%
- 「ロシアが核使用する可能性について恐ろしいと感じますか」
感じない 21%
感じる 77%
プーチン氏が核を先制使用するのかについては、ロシア人の間で意見が割れている。また、核を恐ろしいと感じる人が大半を占め、ロシアの世論が核使用に賛成しているとまではなっていないようだ。
果たして、最近のロシア側から発せられる核使用への言及は、その危険性がかつてないほどに高まっているサインなのか、西側へのブラフにとどまるのか。また、その先、追い詰められたロシアはいったい、どんな選択をするのだろうか。