「核の3本柱」という表現は、ウクライナ本格侵攻後もロシアメディアに登場した。侵攻4日目の2月27日。プーチン大統領はショイグ国防相に、核抑止戦力を「高度な警戒態勢」に移すよう指示した。その言葉の意味を、プーチン氏に近いテレビ司会者がネットメディアで解説した。

「抑止戦力とは、核の『3本柱』のことです。ロシアの原潜11隻から500発以上の核弾頭を撃ち込め、それだけで全NATO諸国を亡ぼせます。その他、大陸弾道ミサイルの威力は言うまでもありません。核弾頭数でロシアは世界一。プーチンは『ロシアを脅してはならない』と警告したのです」。

 実際、米ロは核弾頭をそれぞれ約6千発持ち、世界の9割を占める。

 さらにこの司会者は、テレビのトークショーでも、ウクライナ支援に最も積極的な英国にミサイルが飛んでいくCGを見せながら、「小さな島国は核ミサイル1発で永久に消滅する」とも述べた。

 ただし、プーチン大統領自身が「核を使用する」とはっきり述べたことはない。御用マスコミをはじめ、その意向をくむ人々が、プーチン氏の言葉を自分なりに解説し、西側諸国を脅す。こうした役割分担ができており、ウクライナへの支援を何とか防ごうとしているのだ。つまり、この時点では核使用をほのめかして脅してはいるが、本気で「核を使う」と警告しているわけではない。

 では、どんな場合にそこから一歩進んで、戦術核兵器が使われる可能性があるとロシアは考えているのか。

 一つの参考になるのは、メドベージェフ安全保障会議副議長(元大統領)の説明だろう。ロシアメディアが次のように伝えた。

 メドベージェフは「ロシアの軍事ドクトリンで戦術核兵器の使用は想定されているのか」との質問に、「我が国ではそのテーマのドクトリンは公開されており、『核抑止分野における基本国家戦略』という文書もある」。ロシアが核兵器を使用する根拠として、敵国の核兵器使用、核兵器を管理している軍施設への攻撃、国家そのものの存立を危うくする事態などを列挙した。そして、「今のところ、そういう行為はみられない」と述べた。

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