米ニューヨークタイムズ紙(9日10日)はプーチン氏の胸のうちを推し量るような記事を書いた。ウクライナ軍の東部ドンバス方面での反攻を受け、次のように伝えた。
「ベストシナリオはロシア軍が今の前線から撤退することだろうが、危険なのは、モスクワが絶望にかられて核使用の瀬戸際に向かうことだ。戦場での敗北を戦術核で逆転する戦略をロシアは想定しているからだ。(ウクライナが)どこまで軍を進撃させるべきなのか。(ウクライナ南部にあり、ロシアが一方的に編入した)クリミア半島や、ドンバスは、越えると危険な一線なのかもしれない」。
核のボタンを持つのはプーチン大統領。世論が反対したり、逆に軍事ブロガーが煽ったりしたとしても、最後に決めるのはプーチン氏ひとりだ。
ウクライナ・ハリキウ州でのロシア軍大敗が日本などで報じられた9月10日、筆者はロシア国営テレビのサイトをノートパソコンで開いた。代表的な報道番組「ブレーミャ」は、モスクワの創設875周年の祭典がトップニュースだった。プーチン氏もそのニュースに登場。映像の中では終始、上機嫌で笑顔を見せていた。
岡野直/1985年、朝日新聞社入社。プーシキン・ロシア語大学(モスクワ)に留学後、社会部で基地問題や自衛隊・米軍を取材。シンガポール特派員として東南アジアを担当した。2021年からフリーに。関心はロシア、観光、文学。全国通訳案内士(ロシア語)。共著に『自衛隊知られざる変容』(朝日新聞社)