核兵器を使うしかないのでは――。そんな声がロシア人の軍事ブロガーからあがった。9月中旬、ロシア軍が、ウクライナ北東部ハルキウ州でウクライナ軍の奇襲を受け、敗走を重ねたからだ。ウクライナ本格侵攻後、核使用の脅しは、プーチン大統領をはじめ様々なロシア人がかけてきた。いったいどうなるのか。
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プーチン大統領はウクライナ東部ドンバス地方の軍事的な「解放」を戦争目標に掲げている。「ドンバス決戦」の行方がプーチン政権の今後を左右する、と言っても過言ではない。ドンバスのうちルハンシク州はロシア軍が押さえ、残るドネツク州の攻防が焦点となっている。
その北隣ハルキウ州はロシアからのドンバスの戦地への補給路が走る。ウクライナ軍は9月10日までに、鉄道輸送の拠点だった同州クピャンスクを奪還するなど、重要な補給路を断った。ロシア側は、3日間で50キロも進軍する素早い奇襲を受け、大敗北した。ロシアの軍事ブロガー、「ロマノフ・ライト」が9月10日、SNSに次のように書き込んだ。このブロガーは、米国のシンクタンク「戦争研究所」も情報源としている。
「ハリコフ(ハルキウ)州をロシアが失うのは時間の問題。焦点は(ドンバスでロシアがすでに占領した)ルガンスクを救えるかどうかだ。唯一の手段は、(西側の武器供与のルートである)ウクライナ西部諸州への戦術核使用だ。あらかじめ降伏をキエフに求めたうえで、数発撃ち込めばよい。前例がある。1945年の日本だ。アメリカはこの方法で日本を占領下においた」
日本人にとっては物騒な発言に聞こえるが、実はロシア側の核戦力の重視は、2000年に大統領に当選したプーチン氏が任期1期目すでに表明していた。当時、ロシアのテレビインタビューに「ロシアの国力の源泉は天然資源と『核の3本柱』です。(核弾頭の運搬手段の)大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機、原子力潜水艦、この三つを持つのはロシアとアメリカだけなのです」と述べた。